第一審は被告人に對し懲役四ケ月及罰金二萬圓、右罰金を完納することができないときは百日間勞役場留置の判決を宣告し、第二審は懲役四ケ月及罰金二萬圓、右罰金を完納することができないときは百圓を一日に換算した期間勞役場留置の判決を宣告したのであつて、この原判決主文の換刑處分は第一審判決の留置期間より長いのである。元來勞役場留置はいわるる換刑處分であつて、その本刑に準ずべき性質のものであり、その期間の長短が被告人の利害に直接の關係があることは、自由刑が科せられる場合と何ら異なるところがないから、罰金不完納の場合の勞役場留置の言渡についてもいわゆる不利益變更禁止の規定の適用があり、本件においては檢察官の控訴または附帶控訴はなかつたのであるから、原判決は違法である。
罰金の換刑處分を第一審より不利益に變更した第二審判決と不利益變更の禁止
舊刑訴法403條,刑法18條1項
判旨
罰金不完納の場合の労役場留置は本刑に準ずる性質を有するため、その期間の延長は被告人の不利益となり、不利益変更禁止の原則が適用される。
問題の所在(論点)
被告人のみが控訴した事件において、本刑(懲役・罰金額)が同一であっても、罰金不完納の場合の労役場留置期間を第一審よりも長く変更することは、不利益変更禁止の原則に反するか。
規範
罰金不完納の場合の労役場留置は、換刑処分として本刑に準ずる性質を有する。その期間の長短は被告人の利害に直接の関係があり、自由刑が科せられる場合と異ならないため、被告人のみが控訴した事件において、第一審よりも労役場留置期間を長くすることは、不利益変更禁止の原則(刑事訴訟法402条参照)に抵触し、許されない。
重要事実
被告人が食糧管理法違反および物価統制令違反で起訴された事件。第一審は、被告人を懲役4月および罰金2万円に処し、罰金不完納時の労役場留置期間を「100日間」とした。これに対し被告人のみが控訴したところ、第二審(原審)は、同じく懲役4月および罰金2万円としたが、労役場留置の換算を「100円を1日」とした。これにより、罰金2万円を完納できない場合の留置期間は「200日間」となり、第一審の100日間より長期化する結果となった。
事件番号: 昭和26(れ)1826 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
本件において、第一審判決は被告人を懲役三年及び罰金三〇万円(罰金不完納の場合における労役場留置期間の言渡を遺脱)に処したのに対し、原控訴審判決は被告人を懲役三年但し五年間刑の執行猶予及び罰金四〇万円(前金不完納の場合に金一、〇〇〇円を一日に換算した期間労役場留置)に処したのであるから、原控訴審判決は少しも前記大審院判決…
あてはめ
労役場留置は、罰金を完納できない場合に身体の自由を拘束する処分であり、その実質は自由刑と同様である。本件において、第一審は留置期間を「100日」と定めていたのに対し、原審は換算額の指定によって実質的に留置期間を「200日」へと延長している。これは、検察官の控訴がない状況において、第一審判決よりも被告人に不利益な刑を言い渡したものといえる。したがって、かかる変更は不利益変更禁止の規定(旧刑訴法403条、現刑訴法402条)に違反する。
結論
罰金不完納の場合の労役場留置の言渡しについても不利益変更禁止の規定の適用があり、第一審より留置期間を長くした原判決は違法として破棄される。
実務上の射程
罰金刑の言い渡しに際し、労役場留置の換算額や期間を検討する際の重要な制約となる。本刑としての罰金額が減額されたとしても、換算率の変更によって留置期間が結果的に第一審より長期化する場合は、不利益変更にあたる可能性があるため注意を要する。
事件番号: 昭和26(れ)384 / 裁判年月日: 昭和26年10月16日 / 結論: 棄却
一 罰金不完納の場合における労役場留置の言渡についてもいわゆる不利益変更禁止の規定の適用がある。 二 大審院の判例に反すると主張していても、既にこれと同趣旨の最高裁判所の判例があるときは、刑訴第四〇五条第三号にあたらない。 三 高裁の判例に反すると主張していても、既にその判例が最高裁判所の判例で変更せられているときは、…