本件において、第一審判決は被告人を懲役三年及び罰金三〇万円(罰金不完納の場合における労役場留置期間の言渡を遺脱)に処したのに対し、原控訴審判決は被告人を懲役三年但し五年間刑の執行猶予及び罰金四〇万円(前金不完納の場合に金一、〇〇〇円を一日に換算した期間労役場留置)に処したのであるから、原控訴審判決は少しも前記大審院判決(昭和一五年(れ)第五〇四号同年七月二四日)に反するものではない。
第一審で懲役三年、罰金三〇万円、第二審で懲役三年但し五年間刑の執行猶予及び罰金四〇万円を言渡した場合と不利益変更に関する判例違反の有無
旧刑訴法403条,刑訴法405条,刑訴法411条
判旨
懲役刑と罰金刑が併科された場合の刑の軽重は、まず重い方の懲役刑を比較して判断すべきであり、懲役刑に差がない場合に初めて罰金刑を比較して定めるべきである。
問題の所在(論点)
旧刑事訴訟法403条(現行刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の原則)に関連し、懲役刑と罰金刑が併科される場合において、刑の軽重をどのような順序で比較して判断すべきか。
規範
一個の主文において懲役刑と罰金刑を併科する場合、その刑の軽重の判断枠組みは、常にまず重き刑(懲役刑)の軽重を比較し、その軽重に従い科刑の軽重を定める。懲役刑において軽重の差がない場合に限り、初めて罰金刑の軽重を比較して併科刑全体の軽重を判断すべきである。
重要事実
第一審判決が、被告人を懲役3年及び罰金30万円(労役場留置の言渡遺脱)に処したのに対し、原控訴審判決は、被告人を懲役3年(執行猶予5年)及び罰金40万円(1日1000円換算の労役場留置)に処した。これに対し、控訴審判決は第一審より重い罰金を科しており不利益変更にあたると主張された事案である。
事件番号: 昭和24(れ)3036 / 裁判年月日: 昭和25年4月25日 / 結論: 破棄自判
第一審は被告人に對し懲役四ケ月及罰金二萬圓、右罰金を完納することができないときは百日間勞役場留置の判決を宣告し、第二審は懲役四ケ月及罰金二萬圓、右罰金を完納することができないときは百圓を一日に換算した期間勞役場留置の判決を宣告したのであつて、この原判決主文の換刑處分は第一審判決の留置期間より長いのである。元來勞役場留置…
あてはめ
本件では、第一審と控訴審ともに懲役刑は「3年」であり、重き刑である懲役刑において軽重の差は認められない。この場合に初めて罰金刑を比較するところ、控訴審は罰金40万円を科しているが、第一審判決に付された執行猶予の有無や労役場留置の言渡しの有無等を総合して判断した結果、大審院判例の判断枠組み(懲役刑優先比較)に反するものではないと判断される。
結論
懲役刑が同等である以上、罰金刑のみを理由に直ちに併科刑全体が重くなったとはいえず、控訴審判決に違法はない。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)における刑の軽重比較の具体的基準を示す。主刑が併科されている場合、法定刑の重い種類から順に比較するという優先順位を明確にしており、答案上は複数の刑が科された際の不利益変更の有無を検討する際の論理ステップとして活用できる。
事件番号: 昭和22(れ)222 / 裁判年月日: 昭和23年4月8日 / 結論: 棄却
原判決が、上記食糧管理法第三一條の法定刑と物價統制令第三三條の法定刑を對照するに當り、刑法施行法第三條の適用を明示しなかつた瑕疵はあるが、結局併科刑又は選擇刑の輕い刑種の罰金を度外視し、これを不問に附して重い刑種の懲役のみを對照比較し、その長期も短期も同じであるから刑法第一〇條第三項を適用し自由裁量によつて犯情により食…
事件番号: 昭和26(れ)1174 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、上告適法の理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪の量刑が重すぎるとして、弁護人が上告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):量刑不当の主張が、法的に適法な上告理由として認められるか。 第3 規範:上告審において量…
事件番号: 昭和26(れ)1252 / 裁判年月日: 昭和26年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯人の処罰は各犯罪および各犯人の具体性に基づいて個別に行われるべきであり、刑の不均衡を理由とする憲法14条違反の主張は認められない。また、裁判の迅速を欠いたとしても、それが判決に影響を及ぼさないことが明らかであれば、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が原判決の刑の重さについて、他者と…
事件番号: 昭和26(れ)384 / 裁判年月日: 昭和26年10月16日 / 結論: 棄却
一 罰金不完納の場合における労役場留置の言渡についてもいわゆる不利益変更禁止の規定の適用がある。 二 大審院の判例に反すると主張していても、既にこれと同趣旨の最高裁判所の判例があるときは、刑訴第四〇五条第三号にあたらない。 三 高裁の判例に反すると主張していても、既にその判例が最高裁判所の判例で変更せられているときは、…