一 罰金不完納の場合における労役場留置の言渡についてもいわゆる不利益変更禁止の規定の適用がある。 二 大審院の判例に反すると主張していても、既にこれと同趣旨の最高裁判所の判例があるときは、刑訴第四〇五条第三号にあたらない。 三 高裁の判例に反すると主張していても、既にその判例が最高裁判所の判例で変更せられているときは、刑訴第四〇五条第三号にあたらない。
一 罰金不完納の場合における労役場留置の言渡と不利益変更禁止の原則 二 刑訴法第四〇五条第三号にあたらない二つの事例
刑法18条,旧刑訴法403条,刑訴法405条3条
判旨
罰金不完納時の労役場留置の言渡しにも不利益変更禁止の原則が適用されるが、不利益か否かは、換算率のみならず、主刑(懲役・罰金)を含めた刑全体を比較して判断すべきである。
問題の所在(論点)
罰金不完納時の労役場留置の換算率を第一審よりも低く(被告人に不利に)変更することが、刑全体として罰金額や懲役刑が軽減されている場合に、不利益変更禁止の原則に違反するか。
規範
罰金不完納の場合の労役場留置は、換刑処分として本刑に準ずる性質を有するため、不利益変更禁止の規定(刑事訴訟法402条参照)の適用を受ける。ただし、変更が被告人に不利益であるか否かは、労役場留置の1日当たりの換算率のみで判断するのではなく、言い渡された主刑の有無、罰金額、および労役場留置の総期間など、判決全体を比較して決定される。
重要事実
第一審は被告人に対し、懲役1年(執行猶予2年)および罰金10万円(不完納時は1日500円換算の労役場留置)を言い渡した。これに対し、原審(控訴審)は懲役刑を科さず、罰金を3万円に減額した。一方で、罰金不完納時の換算率を1日300円に引き下げた。被告人は、換算率が500円から300円に低下したことは不利益変更にあたると主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)3036 / 裁判年月日: 昭和25年4月25日 / 結論: 破棄自判
第一審は被告人に對し懲役四ケ月及罰金二萬圓、右罰金を完納することができないときは百日間勞役場留置の判決を宣告し、第二審は懲役四ケ月及罰金二萬圓、右罰金を完納することができないときは百圓を一日に換算した期間勞役場留置の判決を宣告したのであつて、この原判決主文の換刑處分は第一審判決の留置期間より長いのである。元來勞役場留置…
あてはめ
原審は、第一審が言い渡した懲役1年を免除し、罰金額も10万円から3万円へと大幅に減じた。その結果、罰金不完納時の換算率が1日500円から300円に低下したとしても、留置されるべき総日数は200日から100日へと減少している。換算率という一部の指標のみを見れば不利益に見えるが、主刑の軽減および留置期間の短縮という判決の全体的な効果を考慮すれば、被告人にとって有利な変更といえる。したがって、実質的に第一審の刑より重い刑を言い渡したものとは認められない。
結論
不利益変更禁止の規定には抵触しない。換算率が悪化しても、刑全体として軽減されている以上、上告は理由がない。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則における「不利益」の判断は、形式的な算定方式の変更ではなく、被告人が受ける実質的な刑の負担(刑の種類、量、期間)を総合的に比較して決するという実務上の基準を示している。
事件番号: 昭和24(れ)2828 / 裁判年月日: 昭和26年1月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不利益変更禁止の原則における「原判決の刑より重い刑」とは、判決主文の科刑を原判決と比較して重くすることを指す。したがって、事実認定において一部無罪とした場合であっても、主文の科刑が重くなっていない限り、同原則には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が控訴したところ、第二審判決は事実認定において一…
事件番号: 昭和26(れ)1826 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
本件において、第一審判決は被告人を懲役三年及び罰金三〇万円(罰金不完納の場合における労役場留置期間の言渡を遺脱)に処したのに対し、原控訴審判決は被告人を懲役三年但し五年間刑の執行猶予及び罰金四〇万円(前金不完納の場合に金一、〇〇〇円を一日に換算した期間労役場留置)に処したのであるから、原控訴審判決は少しも前記大審院判決…
事件番号: 昭和26(れ)511 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法令が改正された場合において、改正前の行為に改正後の規定を適用することは法の遡及適用に当たり原則として許されないが、併合罪の関係にある他の罪の法定刑に従って処断され、刑の量定に影響がない場合には、判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は臨時物資需給調整法違反…
事件番号: 昭和25(あ)1802 / 裁判年月日: 昭和26年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは人道上残虐と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で行われた量刑は、被告人にとって過酷であっても同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受け、その量刑を不服として控訴したが棄却された。被告人(弁護人)は、原判決の維持した量刑が不当に…