判旨
法令が改正された場合において、改正前の行為に改正後の規定を適用することは法の遡及適用に当たり原則として許されないが、併合罪の関係にある他の罪の法定刑に従って処断され、刑の量定に影響がない場合には、判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
改正後の規定を改正前の行為に適用した法令適用の違法がある場合に、当該違法が刑訴法411条1号所定の破棄事由に該当するか。
規範
法の遡及適用の禁止の原則から、特段の定めがない限り、改正後の規定をその施行前の行為に適用することは許されない。もっとも、上告審において原判決に法令適用の誤りがある場合であっても、刑訴法411条1号の規定に鑑み、その違法が判決に影響を及ぼすべき著しいものでなく、かつ、刑の執行を猶予し、又は刑を免除する等、著しく正義に反すると認められない限り、原判決を破棄することは要しない。
重要事実
被告人は臨時物資需給調整法違反および物価統制令違反の罪に問われた。原判決は、臨時物資需給調整法違反の事実に関し、行為後に改正された「指定生産資材割当規則8条」の規定を、その改正前の行為に対して適用した。しかし、原判決は当該行為について物価統制令違反の事実も併せて認定しており、全体として同令所定の刑(重い方の刑)に従って処断していた。
あてはめ
本件では、原判決が改正後の規則を改正前の行為に適用した点において、確かに法令適用の違法が認められる。しかし、原判決は臨時物資需給調整法違反のみならず物価統制令違反の事実も認定しており、結局は物価統制令所定の刑によって処断している。この場合、適用法令の誤りはあっても、宣告された刑の範囲や重さ自体は妥当であり、結論としての刑が不相当とは認められない。したがって、右の違法は判決の結論を左右するものではなく、判決を破棄しなければ著しく正義に反するとはいえない。
結論
原判決には法令適用の違法があるものの、刑の量定において結論に影響を及ぼさないため、刑訴法411条1号に当たらず、上告は棄却される。
事件番号: 昭和27(あ)5893 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に適用法令の誤りがある場合であっても、適用されるべき正しい罰則が同一であり、その違法が判決の結果に影響を及ぼさないときは、原判決を破棄すべき理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年3月14日に石油製品の配給に関する違反行為を行った。原判決は、この行為に対して石油製品配給規則11…
実務上の射程
刑事訴訟法上の破棄事由の判断において、実体法上の適用誤り(遡及適用の禁止違反等)があっても、併合罪の処理等を通じて最終的な刑の選択に変更がない場合には、判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反として認められないことを示す一例である。
事件番号: 昭和26(れ)1926 / 裁判年月日: 昭和26年12月11日 / 結論: 棄却
所論は、原判決が、被告人の犯罪事実第一の一に対し、昭和二三年六月一五日の改正前の指定生産資材割当規則第八条を適用すべきにかかわらず、改正後の第九条を適用したのは、法令によらない裁判であつて、憲法に違反するというのである。仮に原判決が誤つて、改正後の同規則を適用したものと解しても、本件において両者は、実質的に差異がないの…
事件番号: 昭和26(れ)759 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、刑訴法施行法3条の2及び刑訴法408条に基づき、上告理由が不適法である場合、または職権による破棄の必要がない場合には、弁論を経ずに判決をもって上告を棄却できることを示した。 第1 事案の概要:弁護人が上告趣意書を提出して上告を申し立てたが、その内容が刑訴法405条に定める上告理由(憲法違…
事件番号: 昭和26(れ)770 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
臨時物資需給調整法附則第二項但書は、同法失効後の規定であつて、同法はまだ失効していないのであるから、本件については同但書の適用はないのである。従つて、同但書が憲法一四条違反である旨の主張はその前提を欠き採用することはできない。
事件番号: 昭和26(れ)674 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、被告人の上告趣意について刑事訴訟法405条の事由に該当しないとし、かつ同法411条を適用して原判決を破棄すべき著しい正義に反する事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、具体的な公訴事実の内容や下級審の判断、被告人が主張…