臨時物資需給調整法附則第二項但書は、同法失効後の規定であつて、同法はまだ失効していないのであるから、本件については同但書の適用はないのである。従つて、同但書が憲法一四条違反である旨の主張はその前提を欠き採用することはできない。
臨時物資需給調整法附則第二項但書は同法失効後の規定である
臨時物資需給調整法附則2項但書,憲法14条
判旨
臨時物資需給調整法に基づく衣料品配給規則等が犯罪成立後に廃止されても、それは刑の廃止(刑訴法402条4号等)には当たらず、なお従前の罰則が適用される。
問題の所在(論点)
犯罪後の法令改廃により、禁止の根拠となった規則が廃止された場合、刑訴法上の「刑の廃止」に該当し免訴すべきか。また、省令附則による罰則適用の継続が憲法に抵触するか。
規範
法令により禁止されていた行為が、その後の法令の改廃により禁止されなくなった場合であっても、それが単なる事実上の変動に基づくときは、刑法6条の「法律の変更」や刑訴法337条2号の「刑の廃止」には当たらない。また、廃止省令の附則において施行前の行為に対し罰則の適用を継続する旨の経過規定がある場合、その効力は維持される。
重要事実
被告人は、臨時物資需給調整法および衣料品配給規則に違反する行為を行った。しかし、当該犯罪の成立後、同規則は昭和26年通商産業省令第27号により廃止された。一方で、同省令の附則3項には「この省令の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定が置かれていた。弁護人は、告示の廃止が刑の廃止に当たり、罰則を適用することは憲法14条にも違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)677 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後、統制価格に関する告示が廃止されたとしても、それは単なる事実の変化にすぎず、刑法6条及び刑事訴訟法402条(旧刑訴法363条)にいう「刑の廃止」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条に違反する行為(超過価格による取引等)を行った。しかし、当該行為の後に、…
あてはめ
最高裁の累次の判例によれば、臨時物資需給調整法等に基づく告示が犯罪成立後に改廃されても、それは刑の廃止には当たらない。本件で衣料品配給規則が廃止された際も、廃止省令の附則3項において、施行前の行為に対し従前の例による旨が明記されており、罰則の効力に影響を及ぼさないことは明白である。さらに、同法は未だ失効していないため、失効後について規定する同法附則2項但書の適用を前提とした違憲の主張は、前提を欠くものである。
結論
規則の廃止は刑の廃止には当たらないため、犯罪後の法令変更による免訴は認められず、従前の罰則に基づき処罰される。
実務上の射程
限時法や行政規制を補充する法規の改廃が「刑の廃止」に当たるかという論点(法律の変更の意義)において、事実上の変更と法律上の変更を区別する判例理論を支持するもの。省令の経過規定の有効性を認める際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和26(れ)717 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に、同令に基づく価格統制額を指定した主務官庁の告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条に違反して、告示により指定された統制価格を超える価格で衣…
事件番号: 昭和25(あ)1147 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】経済統制法違反の犯罪成立後、当該告示が廃止されたとしても、それは刑罰そのものを廃止するものではない。したがって、刑法6条(法律の変更)や刑訴法337条2号(刑の廃止)は適用されず、免訴の判決をすべき理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は経済統制法に違反する行為を行ったが、犯罪成立後にその根…
事件番号: 昭和25(れ)775 / 裁判年月日: 昭和25年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令により罰則が廃止された場合であっても、それが事実上の変更にすぎないときは、行為時の法令を適用して処罰することは憲法及び刑法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人等は、畳表の価格および配給に関する統制法令に違反する行為を行った。しかし、判決時までに農林省令等により畳表の価格統制および配…
事件番号: 昭和25(あ)1669 / 裁判年月日: 昭和27年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】限時法の性質を有する法令が廃止された場合であっても、附則に「改正前の行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の経過規定があるときは、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資需給調整法に基づく薪炭需給調整規則に違反する行為を行ったが、その後…