判旨
経済統制法違反の犯罪成立後、当該告示が廃止されたとしても、それは刑罰そのものを廃止するものではない。したがって、刑法6条(法律の変更)や刑訴法337条2号(刑の廃止)は適用されず、免訴の判決をすべき理由とはならない。
問題の所在(論点)
犯罪成立後に、その処罰の根拠となっていた行政上の告示が廃止された場合、刑訴法337条2号(または刑法6条)にいう「刑の廃止」にあたり、免訴とすべきか。いわゆる「限時法」的性質を有する規定の変更の法的性質が問題となる。
規範
経済統制法等の規定に基づき発せられた告示等の改正・廃止は、単なる事実関係の変更にすぎず、刑罰そのものの廃止(法律の変更)には該当しない。したがって、行為時の法令が適用され、処罰されるべきものと解する。
重要事実
被告人は経済統制法に違反する行為を行ったが、犯罪成立後にその根拠となる告示が廃止された。被告人側は、これが刑の廃止(刑訴法337条2号等)にあたると主張し、免訴の判決を求めて上告した。判決文中に具体的な違反事実の詳細は記載されていない(判決文からは不明)。
あてはめ
最高裁判所大法廷の判例(昭和25年11月15日判決)を引用し、経済統制法違反の犯罪成立後に告示が廃止されたとしても、それは刑罰を廃止するものではないと判断した。これは、告示の廃止が法律そのものの評価の変更ではなく、社会情勢の変化に応じた一時的な措置(事実の変更)に留まることを示唆している。
結論
告示の廃止は刑罰の廃止にはあたらないため、免訴の主張には理由がなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、限時法の理論(事実の変更と法律の変更の区別)に関する古典的判例である。司法試験の答案作成においては、処罰規定の根拠となる行政命令や告示が廃止・改正された際、行為時の法で処罰可能か(刑法6条が適用されないか)を論じる際の論拠として利用できる。特に『法律の廃止』ではなく『単なる事実の変更』に過ぎないとする論理構成の核心を示すものである。
事件番号: 昭和26(れ)1233 / 裁判年月日: 昭和27年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当たるとされる場合でも、特定の告示の廃止が事実上の変更にとどまる場合には、刑訴法337条2号の免訴事由には該当しない。 第1 事案の概要:被告人が、当時の法令および告示に基づき禁止されていた行為(詳細は判決文からは不明だが、先行判例の引用から物価統制令等に関連…
事件番号: 昭和26(れ)677 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後、統制価格に関する告示が廃止されたとしても、それは単なる事実の変化にすぎず、刑法6条及び刑事訴訟法402条(旧刑訴法363条)にいう「刑の廃止」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条に違反する行為(超過価格による取引等)を行った。しかし、当該行為の後に、…
事件番号: 昭和25(あ)11 / 裁判年月日: 昭和26年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に統制額を指定した告示が廃止されても、刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令3条に違反する行為を行った。その後、同令に基づき価格等の統制額を指定していた告示が廃止された。弁護人は、この告示の廃止が…
事件番号: 昭和26(れ)717 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に、同令に基づく価格統制額を指定した主務官庁の告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条に違反して、告示により指定された統制価格を超える価格で衣…
事件番号: 昭和25(れ)775 / 裁判年月日: 昭和25年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令により罰則が廃止された場合であっても、それが事実上の変更にすぎないときは、行為時の法令を適用して処罰することは憲法及び刑法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人等は、畳表の価格および配給に関する統制法令に違反する行為を行った。しかし、判決時までに農林省令等により畳表の価格統制および配…