判旨
犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当たるとされる場合でも、特定の告示の廃止が事実上の変更にとどまる場合には、刑訴法337条2号の免訴事由には該当しない。
問題の所在(論点)
行政上の告示が廃止されたことが、刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴を言い渡すべき事由となるか。
規範
刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」とは、単に事実上の事情の変化によって特定の規制が不要となった場合を含まず、法律ないしその委任に基づく命令が、当該行為を処罰の対象から除外する趣旨で変更・廃止された場合を指す。行政上の告示の廃止が、単なる経済情勢の変遷等の事実上の事情の変化に基づくものであれば、刑の廃止には当たらない。
重要事実
被告人が、当時の法令および告示に基づき禁止されていた行為(詳細は判決文からは不明だが、先行判例の引用から物価統制令等に関連する規制と推認される)を行った。その後、当該規制の根拠となっていた告示が廃止されたため、被告人が刑訴法337条2号に基づき、犯罪後の法令により刑が廃止されたとして免訴を求めて上告した事案である。
あてはめ
本件における告示の廃止は、先行判例(最判昭25.10.11)の趣旨に照らせば、法律的見地の変更により当該行為の処罰を不当としたものではなく、単に社会情勢の変化に伴う事実上の必要性の消滅に基づくものと解される。したがって、このような告示の廃止は、法的な刑の廃止を意味するものではなく、行為時の違法性を否定するに足りる法令の変更には当たらない。
結論
本件のごとき場合に告示が廃止されても免訴すべきものではない。したがって、免訴を認めず上告を棄却した原判断は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(れ)717 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に、同令に基づく価格統制額を指定した主務官庁の告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条に違反して、告示により指定された統制価格を超える価格で衣…
本判決は、いわゆる「限時法」や「事実上の変更」の理論を維持するものである。答案上は、法令の変更が「法律的見解の変更」か「事実上の事情の変更」かを区別する際の根拠として用いる。ただし、判文が極めて簡略であるため、具体的なあてはめにおいては、昭和25年の大法廷判決の法理を前提とした運用が求められる。
事件番号: 昭和25(あ)11 / 裁判年月日: 昭和26年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に統制額を指定した告示が廃止されても、刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令3条に違反する行為を行った。その後、同令に基づき価格等の統制額を指定していた告示が廃止された。弁護人は、この告示の廃止が…
事件番号: 昭和25(れ)1672 / 裁判年月日: 昭和26年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に統制額指定の告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。いわゆる限時法や事実の変遷に伴う規制の廃止は、法の反省的考慮に基づく刑の廃止とは区別される。 第1 事案の概要:被告人が、物価統制令…
事件番号: 昭和25(あ)1147 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】経済統制法違反の犯罪成立後、当該告示が廃止されたとしても、それは刑罰そのものを廃止するものではない。したがって、刑法6条(法律の変更)や刑訴法337条2号(刑の廃止)は適用されず、免訴の判決をすべき理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は経済統制法に違反する行為を行ったが、犯罪成立後にその根…