判旨
物価統制令違反の行為後に統制額を指定した告示が廃止されても、刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当しない。
問題の所在(論点)
物価統制令に基づく価格指定告示の廃止が、刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴事由となるか。
規範
刑罰規定そのものが改廃されたのではなく、その委任に基づき具体的事態に対応して定められた個別的な告示等が変更・廃止されたにすぎない場合は、刑法6条及び刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」にはあたらない。
重要事実
被告人は物価統制令3条に違反する行為を行った。その後、同令に基づき価格等の統制額を指定していた告示が廃止された。弁護人は、この告示の廃止が刑訴法337条2号(旧刑訴法363条)の「犯罪後の法令に因り刑の廃止ありたるとき」に該当し、免訴の言渡しをすべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、物価統制令という刑罰の根拠となる法令自体は存続しており、その運用の基礎となる個別的な告示が廃止されたにすぎない。このような告示の変更は、事実上の事態の変化(経済情勢の変遷等)に応じた措置であり、刑罰規定そのものを廃止する趣旨ではない。したがって、刑訴法337条2号の「刑の廃止」にはあたらず、処罰を免れるものではない。これは命令が法律に優先する結果ではなく、刑訴法の解釈として当然の帰結である。
結論
告示の廃止は「刑の廃止」に該当しないため、被告人を免訴しなかった原判決は正当であり、本件上告を棄却する。
実務上の射程
限時法や委任命令、告示の変更があった場合に、行為時法と裁判時法のいずれを適用すべきかという問題(刑法6条、刑訴法337条2号)において、本判決は「事実上の変更」にすぎない場合は刑の廃止にあたらないとする従来の判例(限時法理論)を維持・確認するものである。
事件番号: 昭和26(れ)1233 / 裁判年月日: 昭和27年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当たるとされる場合でも、特定の告示の廃止が事実上の変更にとどまる場合には、刑訴法337条2号の免訴事由には該当しない。 第1 事案の概要:被告人が、当時の法令および告示に基づき禁止されていた行為(詳細は判決文からは不明だが、先行判例の引用から物価統制令等に関連…
事件番号: 昭和26(れ)717 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に、同令に基づく価格統制額を指定した主務官庁の告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条に違反して、告示により指定された統制価格を超える価格で衣…
事件番号: 昭和25(れ)1672 / 裁判年月日: 昭和26年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に統制額指定の告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。いわゆる限時法や事実の変遷に伴う規制の廃止は、法の反省的考慮に基づく刑の廃止とは区別される。 第1 事案の概要:被告人が、物価統制令…
事件番号: 昭和25(あ)1147 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】経済統制法違反の犯罪成立後、当該告示が廃止されたとしても、それは刑罰そのものを廃止するものではない。したがって、刑法6条(法律の変更)や刑訴法337条2号(刑の廃止)は適用されず、免訴の判決をすべき理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は経済統制法に違反する行為を行ったが、犯罪成立後にその根…