判旨
物価統制令に基づく価格指定告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当しない。したがって、告示廃止前の違反行為について、なお処罰を免れることはなく、免訴を言い渡すべきではない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反の行為があった後に、その統制額を指定した告示が廃止された場合、刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当するか。
規範
刑訴法337条2号(および刑法6条)にいう「法令により刑が廃止されたとき」とは、当該行為の道徳的・社会的評価が変化し、これを処罰することが不適当となったという反省的考慮に基づくものであることを要する。これに対し、経済情勢の変化等に基づき、統制の必要性がなくなったために行われる技術的な告示の廃止は、これに該当しない。
重要事実
被告人は、重炭酸曹達の販売価格につき、物価統制令に基づき指定された統制額を超えて販売した。第一審判決後、当該価格の統制額を指定していた物価庁告示が廃止された。被告人側は、この告示の廃止が「刑の廃止」に当たるとして、免訴の判決をすべきであると主張した。
あてはめ
本件における重炭酸曹達の価格指定告示の廃止は、物価統制という政策上の目的を達成するために行われる一時的・技術的な措置であり、行為当時の処罰規定そのものを反省的に廃止したものではない。大法廷判例(昭和25年10月11日判決)が示す通り、このような告示の廃止は、犯罪そのものの社会的非難が消失したことを意味するものではないから、同法337条2号には該当しないと解される。
結論
本件告示の廃止は刑の廃止に該当せず、被告人はなお処罰を免れない。したがって、免訴を求める上告は棄却される。
実務上の射程
いわゆる「限時法」や、本件のような「法令の委任に基づく告示」の改廃が刑の廃止に当たるかという論点で活用する。答案上は、法令改正の趣旨が「法律上の見解の変更(反省的考慮)」か、単なる「事実上の状態の変化(技術的変更)」かを区別する枠組みとして定式化して用いるのが一般的である。
事件番号: 昭和25(あ)1263 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令に基づき指定された統制額(告示)が廃止されても、それは事実上の変更にすぎず、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令3条に違反する行為(統制額を超える価格での取引等)を行った。その後、当該違反行為の対象とな…