判旨
物価統制令違反の行為後、同令に基づく統制価格の告示が廃止されたとしても、刑法6条や刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反の行為後に、同令に基づく統制価格の告示が廃止された場合、刑事訴訟法337条2号(および刑法6条)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴とすべきか。
規範
法規自体に変更がなく、単にその委任に基づき定められた具体的規制内容(告示等)が事実上の変遷に伴い改廃されたに過ぎない場合は、「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当しない。これは、当時の社会経済情勢に応じた一時的な措置の変更であり、刑罰評価そのものが変更されたわけではないためである。
重要事実
被告人は物価統制令3条に違反する行為を行ったとして起訴された。しかし、第一審判決が認定した事実の前提となる物価庁の告示が、昭和25年1月1日をもって廃止された。被告人側は、根拠となる告示が廃止された以上、刑事訴訟法405条等に基づき免訴の言渡しをなすべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件における告示の廃止は、物価統制令という法律自体の改廃ではなく、その委任に基づく価格規制の運用の変更に留まる。先行する大法廷判決(昭和25年10月11日)の趣旨に照らせば、このような告示の廃止は「法令による刑の廃止」には当たらないと解される。したがって、犯罪成立時の法令に基づき処罰することは、憲法や刑法の原則に反するものではない。
結論
告示の廃止は「刑の廃止」に該当しないため、免訴の言渡しをせず被告人を罰金刑に処した原判決に法令の適用誤りはない。上告棄却。
実務上の射程
いわゆる「限時法」や「事実の変遷」の議論において、法令の改廃が「法律的見解の変更」か「事実上の事情の変更」かを区別する際のリーディングケースである。特に行政刑法において、委任命令や告示のみが変更された場合には、原則として免訴とはならず処罰が可能であるというロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)987 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令に基づく価格指定告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当しない。したがって、告示廃止前の違反行為について、なお処罰を免れることはなく、免訴を言い渡すべきではない。 第1 事案の概要:被告人は、重炭酸曹達の販売価格につき、物価統制令…