本件に適用せられた告示が昭和二二年一〇月二八日以後効力を生じたものであること、しかるに原判示の事実は昭和二二年一〇月一五日以降同二三年五月三日までの取引であるにかかわらず昭和二二年一〇月二八日以前と以後の分の区別が記録上明瞭でないことは所論のとおりである。従つてもし昭和二二年一〇月二八日以前の取引があつたとすればこれについても右告示を適用すべきでないからこの点において原判決は違法である。しかし昭和二二年一〇月二八日以前においては本件洗剤について昭和二一年六月二九日大蔵省告示第五〇四号が適用されその統制額は一瓩六円(本告示においては一瓩五〇円)であるから、たとえ右違法があつたとしてもそれはむしろ被告人に利益であるから原判決破毀の事由とはならない。
物価統制令違反罪につきその取引行為が告示制定の前後にまたがる場合と右告示制定以前の行為については他の告示の適用がある場合と自己に不利益な上告理由
旧刑訴法409条,昭和22年10月28日物価調告示938号,昭和21年月29日大蔵省告示504号
判旨
物価統制令に基づく行政官庁の告示が廃止されたとしても、それは「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当せず、免訴事由とはならない。
問題の所在(論点)
物価統制令の委任に基づく具体的な統制価格(告示)が廃止された場合、刑事訴訟法第337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当するか。
規範
物価統制令等に基づき、具体的価格を定める行政官庁の告示が廃止された場合であっても、それは単なる事実上の変更にすぎず、刑法6条や刑事訴訟法上の「犯罪後の法令により刑の廃止があったとき」には該当しない。
重要事実
被告人らは、代用洗剤の取引において当時の統制額を超過する価格で売買等を行ったとして、物価統制令違反で起訴された。しかし、その後、本件洗剤に関する統制額を定めた告示(物価庁告示)は昭和25年12月に廃止され、統制が解除された。そのため、被告人は、犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当し、公訴棄却(免訴)されるべきであると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所大法廷判例(昭和25年10月11日判決)の趣旨を引用し、行政官庁による告示の廃止は、法令そのものの改廃による刑の廃止と同視できない。本件においても、物価統制令自体の罰則が存続している以上、個別の告示が経済情勢の変化等に伴い廃止されたとしても、それは犯罪成立当時の違法性を否定するものではなく、裁判上の免訴事由とはならないと解される。
結論
行政官庁の告示の廃止は「刑の廃止」に該当しないため、被告人らの上告を棄却し、有罪判決を維持する。
実務上の射程
限時法や事実上の変更に関する典型判例である。行政法規を補完する告示の変更が、処罰規定そのものの廃止を意味するのか、単なる政策的な価格調整(事実の変更)にすぎないのかを区別する際の基準として用いる。
事件番号: 昭和25(あ)1263 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令に基づき指定された統制額(告示)が廃止されても、それは事実上の変更にすぎず、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令3条に違反する行為(統制額を超える価格での取引等)を行った。その後、当該違反行為の対象とな…