刑訴法第三三七条二号の「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合に免訴を言渡すべき旨の規定が憲法第三九条の「何人も実行の時に適法であつた行為については刑事上の責任を問われない」旨の条規の内容をなし又はその反射作用であるから、犯罪後の法令による刑の廃止の場合に免訴の言渡をしなかつたときは、唯に右刑訴法規の適用を誤つたばかりでなく、実は前記憲法の条規に違反し又はその解釈を誤つたものとする趣旨の所論は、独自の見解であつて、是認することはできない。されば、右見解を前提とする本論旨の実質は、単に刑訴第四一一条五号に該当する事由のあることを主張するに帰するのであつて、明らかに上告適法の理由にならない。
「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合に免訴の言渡をしないときは刑訴法第三三七条二号憲法第三九条に違反するとの主張と上告の適否
憲法39条,刑訴法337条2号,刑訴法411条1号
判旨
物価統制令違反の行為後、指定されていた統制額の告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合には該当せず、免訴を言い渡す必要はない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反の行為後、その前提となる統制額を定めた「告示」が廃止されたことが、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止された」ときに該当するか。
規範
刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合とは、刑罰規定そのものが廃止されたり、事実上の必要性によるものではなく反省的見地から法規が改廃された場合を指す。物価統制令のような経済情勢の変化に対応する事実上の必要性に基づく統制額の変更や告示の廃止は、これに含まれない。
重要事実
被告人は昭和23年10月頃、更新自動車用タイヤを当時の物価庁告示による統制額を超えた価格で販売した(物価統制令3条違反)。その後、昭和25年に当該タイヤに関する統制額が廃止され、現在統制価格が存在しない状況となった。弁護人は、これが「犯罪後の法令による刑の廃止」にあたり、免訴を言い渡すべきであると主張した。
あてはめ
本件において、被告人の行為時に適用された物価庁告示の統制額は、その後の社会経済情勢の変化に伴い廃止されたに過ぎない。物価統制令3条という罰則規定自体が廃止されたわけではなく、特定の物品に対する価格統制の必要性が消滅したという事実上の変更に留まる。このような告示の廃止は、法の反省的考慮に基づく刑の廃止とは解されないため、刑訴法337条2号の適用要件を充足しない。
結論
被告人の行為は、犯罪後の法令により刑が廃止された場合に当たらない。したがって、免訴を言い渡さず有罪とした原判決に違法はなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
法令(特に白地刑罰法規)の変更が「刑の廃止」に当たるか否かについては、法改正の動機が「反省的見地」か「事実上の必要性(時局の変化)」かで区別する。本判決は物価統制令に関する代表的な判例であり、現在の経済事犯や行政刑罰の改廃における「限時法」的解釈の指針として答案上活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1263 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令に基づき指定された統制額(告示)が廃止されても、それは事実上の変更にすぎず、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令3条に違反する行為(統制額を超える価格での取引等)を行った。その後、当該違反行為の対象とな…