判旨
物価統制令違反の行為後に統制額の指定(告示)が廃止されても、刑訴法337条2号(旧363条)の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。また、このような事後的な統制廃止は、憲法39条が禁止する二重処罰や遡及刑の禁止にも抵触せず、既に成立した犯罪の処罰を免れさせるものではない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反の行為後、主務大臣の告示により統制額の指定が廃止された場合、刑訴法337条2号(旧363条)の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきか。
規範
犯罪後の法令により刑の廃止があったというためには、刑罰を規定する法令そのものが廃止または変更されたことを要する。これに対し、特定の物品に対する統制額の指定(告示)の廃止は、事実上の情勢の変化に応じた経済的措置にすぎず、刑罰法規そのものの改廃には当たらない。
重要事実
被告人は小麦粉およびパン(その他の菓子)に関して物価統制令3条に違反する価格で取引を行った。その後、昭和27年経済安定本部告示等により、当該物品の価格統制が廃止された。被告人は、価格統制の廃止は刑訴法上の「刑の廃止」に該当し、または憲法39条に照らして処罰できないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、物価統制令自体の罰則規定が廃止されたわけではなく、同令に基づき指定されていた小麦粉等の価格統制額(告示)が廃止されたにすぎない。これは社会情勢の変化に伴う便宜的な措置であり、犯罪を構成しなくなったという「法令による刑の廃止」とは認められない。また、憲法39条の「既に無罪とされた行為」とは確定裁判により無罪となった場合等を指し、本件のような経済情勢に基づく統制廃止はこれに含まれない。
結論
統制額の告示が廃止されても免訴事由には当たらず、物価統制令違反の罪は依然として成立する(ただし、本件では別途パンに関する事実について大赦があったため、その限度で免訴が認められた)。
実務上の射程
「限時法」の理論(いわゆる事実上の変更説)を採用した判例である。法律そのものではなく、その委任に基づく告示や細則が変更されたにすぎない場合は、原則として「刑の廃止」に当たらないとする論理として、行政刑法全般の事案で活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1263 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令に基づき指定された統制額(告示)が廃止されても、それは事実上の変更にすぎず、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令3条に違反する行為(統制額を超える価格での取引等)を行った。その後、当該違反行為の対象とな…