判旨
犯罪後の法令により罰則が廃止された場合であっても、それが事実上の変更にすぎないときは、行為時の法令を適用して処罰することは憲法及び刑法に違反しない。
問題の所在(論点)
犯罪後に当該行為を処罰する根拠となった統制法令が廃止された場合、刑法6条(刑の変更)や刑事訴訟法337条2号(刑の廃止による免訴)の適用を受けず、依然として行為時の法条に従って処罰されるか(限時法の理論)。
規範
犯罪後の法令により罰が廃止された場合であっても、それが特定の事態に対処するための臨時的な経済統制の解除といった事実上の変更に基づくものであるときは、刑法6条及び刑事訴訟法337条2号にいう「刑の廃止」には該当せず、行為時の法令に従って処罰されるべきである。
重要事実
被告人等は、畳表の価格および配給に関する統制法令に違反する行為を行った。しかし、判決時までに農林省令等により畳表の価格統制および配給統制が廃止され、当該行為に対する罰則規定も事実上消滅していた。被告人等は、法令の廃止により免訴あるいは刑の免除を受けるべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件における畳表の価格・配給統制の廃止は、経済情勢の変遷に伴う政策的な措置(事実上の変更)であると解される。また、廃止に係る省令の附則において「廃止前の行為に対する罰則の適用については、従前の例による」との経過規定が置かれている。したがって、本件犯行は廃止前の法条に基づき依然として処罰の対象となるべきものであり、原判決の適条に違法はない。
結論
被告人等は犯行当時の法条に従って責任を負うべきであり、統制廃止後であっても処罰は維持される。上告棄却。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(あ)1147 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】経済統制法違反の犯罪成立後、当該告示が廃止されたとしても、それは刑罰そのものを廃止するものではない。したがって、刑法6条(法律の変更)や刑訴法337条2号(刑の廃止)は適用されず、免訴の判決をすべき理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は経済統制法に違反する行為を行ったが、犯罪成立後にその根…
限時法(または統制法)の効力喪失後の処罰に関するリーディングケース。答案では、法令変更が「法律的見解の変更」か「単なる事実上の変更」かを区別する枠組みとして活用する。経過規定がある場合はそれに従うが、規定がない場合でも、統制目的の達生による廃止であれば依然として処罰が可能であるという論理構成に用いる。
事件番号: 昭和25(あ)719 / 裁判年月日: 昭和25年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令により刑が廃止された場合に当たるとされるのは、法令の変更が事実関係の認識の変化に基づくものである場合に限られ、単なる経済事情の変動等による事実上の変更にすぎない場合は、既成の犯罪の成立に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は物価庁告示に基づく統制額に違反して物価統制令に違反する…
事件番号: 昭和26(れ)677 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後、統制価格に関する告示が廃止されたとしても、それは単なる事実の変化にすぎず、刑法6条及び刑事訴訟法402条(旧刑訴法363条)にいう「刑の廃止」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条に違反する行為(超過価格による取引等)を行った。しかし、当該行為の後に、…
事件番号: 昭和26(れ)770 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
臨時物資需給調整法附則第二項但書は、同法失効後の規定であつて、同法はまだ失効していないのであるから、本件については同但書の適用はないのである。従つて、同但書が憲法一四条違反である旨の主張はその前提を欠き採用することはできない。