判旨
経済統制法規が廃止された場合であっても、行為時になされた違反行為については、依然として行為時の法条に従って処罰されるべきである。いわゆる限時法の効力消滅後における可罰性について、判例は一貫して追及可能とする立場を維持している。
問題の所在(論点)
刑法6条(法律の変更)に関連し、経済統制の廃止が「法律の変更により刑が廃止されたとき」に該当し、廃止前の違反行為を処罰できなくなるか。いわゆる限時法の失効後における追及の可否が問題となる。
規範
特定の経済的事態に対処するための統制法規(限時法的性質を有するもの)が、事態の変遷に伴い廃止されたとしても、その廃止は将来に向かってのみ効力を有する。したがって、法規の存続期間中に犯された違反行為については、別段の定めがない限り、廃止後であってもなお行為時の法条を適用して処罰することができる。
重要事実
被告人が経済統制法規に違反する行為を行った事案において、その後の統制撤廃により当該行為を処罰する根拠法規が廃止された。被告人側は、法令の改廃により可罰性が消滅したとして、刑の免除や無罪を主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、先行する大法廷判決(昭和25年10月11日判決)を引用し、統制が廃止されてもなお違反者は犯行当時の法条に従って責任を負わなければならないと判断した。これは、経済統制法規の廃止が、単なる事実上の変遷に基づくものであり、犯罪そのものの評価が変わった(反省的廃止)わけではないという理解に基づく。したがって、本件においても行為時の法条の適用は妨げられない。
結論
被告人は行為時の法条に従って依然として刑事責任を負う。統制廃止を理由とする上告は棄却される。
実務上の射程
経済犯や行政犯において、一時的な政策目的で制定された法規が廃止された際の経過措置が争点となる場合に活用できる。答案上は、法律の変更が「反省的考慮」に基づくものか、単なる「事実の変化」に基づくものかを区別する際のリーディングケースとして位置づけられる。
事件番号: 昭和25(あ)257 / 裁判年月日: 昭和25年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為があった後に、同令に基づく統制額を指定した告示が廃止されたとしても、法律(刑罰規範)自体が変更されたわけではないため、なお行為時の法令によって処罰される。 第1 事案の概要:被告人は、水飴およびぶどう糖の統制額を定めた物価庁告示(昭和23年告示233号)に違反する取引を行ったと…
事件番号: 昭和25(れ)775 / 裁判年月日: 昭和25年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令により罰則が廃止された場合であっても、それが事実上の変更にすぎないときは、行為時の法令を適用して処罰することは憲法及び刑法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人等は、畳表の価格および配給に関する統制法令に違反する行為を行った。しかし、判決時までに農林省令等により畳表の価格統制および配…