判旨
物価統制令違反行為後、価格統制が廃止されても、刑法6条(刑の変更)の適用はなく、行為時の法令により処断されるべきである。
問題の所在(論点)
犯罪後に当該行為を禁止していた規制(価格統制)が廃止された場合、刑法6条が適用され、行為時法ではなく裁判時法に基づき「刑の廃止」として無罪とすべきか、あるいは依然として行為時法により有罪とされるべきか。
規範
犯罪後の法令により罰すべき行為ではなくなった場合に刑の廃止があったものとして処罰を否定する刑法6条の原則は、事実上の変更(限時法の失効や経済情勢に伴う規制解除等)には適用されない。物価統制のような政策的な規制変更については、行為時法をもって処断すべきである。
重要事実
被告人は、生糸を統制価格を超える価格で販売し、物価統制令違反に問われた。しかし、当該犯行後に物価庁の告示により生糸の価格統制が廃止されたため、被告人は犯罪後の法令変更により処罰できないと主張して上告した。
あてはめ
判例の立場によれば、物価統制令違反行為は、たとえ犯行後に価格統制が廃止されたとしても、行為時法によって処断される。本件においても、犯行当時において有罪であった以上、その後の価格統制の廃止という事実上の状況変化は、行為時の違法性を左右するものではない。また、売買契約成立場所等の事実認定に多少の瑕疵があったとしても、犯罪の構成要件に直接関わらない事項であれば判決を覆すに足りる違法とはいえない。
結論
生糸の価格統制が廃止されたとしても、行為時法に基づき有罪とした原判決は正当であり、被告人を処罰することができる。
実務上の射程
限時法や事実上の変更(いわゆる法律の改廃と事実の変更の区別)に関する古典的な判例である。行政法規等の頻繁な変更が、純粋な法的評価の変更(反省的考慮)なのか、単なる経済事情の変化に伴う事実上の変更なのかを検討する際、行為時法を適用する根拠として引用できる。
事件番号: 昭和25(れ)726 / 裁判年月日: 昭和25年11月7日 / 結論: 棄却
論旨は被告人の判示行為は犯行当時においては物価統制令違反行為として処罰せらるべきものであつたとしても、犯行後である昭和二五年一月一〇日物価庁告示第七四号を以て蘭草及び蘭製品の統制価格が廃止された為の処罰規定は其効力を失つたから今これを処罰することはできないと主張する。しかし物価統制令違反行為に対しては犯行後において所謂…