論旨は被告人の判示行為は犯行当時においては物価統制令違反行為として処罰せらるべきものであつたとしても、犯行後である昭和二五年一月一〇日物価庁告示第七四号を以て蘭草及び蘭製品の統制価格が廃止された為の処罰規定は其効力を失つたから今これを処罰することはできないと主張する。しかし物価統制令違反行為に対しては犯行後において所謂価格の統制が廃止された場合でも行為時法によつて処罰すべきものであることは当裁判所の判例とするところである。従つて被告人の本件犯行後所論物価庁告示第七四号により蘭草並にその製品の価格統制が廃止されたとしても本件犯行当時において物価統制令違反行為として有罪であつた被告人の行為に対し行為時の同令を適用して有罪を言渡した原判決は正当であつて所論の如き違法はなく、論旨は採用しがたい。(昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日大法廷判決参照)
蘭草及び蘭製品の統制額に関する告示の廃止と旧刑訴法第三六三条第二号にいわゆる「刑ノ廃止」
昭和25年1月物価庁告示74号,旧刑訴法363条2号
判旨
物価統制令違反行為が行われた後に価格統制が廃止された場合であっても、行為時の法規を適用して処罰することは適法である。
問題の所在(論点)
犯行後に価格統制等の行政上の措置が廃止された場合、刑法6条の「法律に従って、刑が変更されたとき」にあたるか。いわゆる限時法や事実の変更の法理が認められるかが問題となる。
規範
刑罰法令が改廃された場合において、それが事実関係の変遷に伴う単なる政策的措置(いわゆる事実の変更)にすぎないときは、刑法6条及び刑事訴訟法402条(旧法446条等)にかかわらず、行為時法を適用して処罰すべきである。
重要事実
被告人は、藺草及び藺製品について物価統制令が施行されていた期間中に、同令に違反する行為を行った。しかし、犯行後の昭和25年1月10日、物価庁告示第74号により、当該製品の価格統制が廃止された。被告人側は、処罰規定の根拠となる統制価格が失効したため、本件行為を処罰することはできないと主張して上告した。
あてはめ
判決文によれば、物価庁告示によって藺草等の価格統制が廃止されたことは、物価統制令という刑罰法規自体の改廃ではなく、経済状況の変化に応じた政策的な価格変更にすぎない。このような場合、犯行当時に違法であった行為の可罰性が事後的に消滅するものではない。したがって、行為時に施行されていた物価統制令を適用して有罪を言い渡した原判決に違法はない。
結論
被告人の行為に対し、行為時法を適用して有罪とすることは正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
法令改正により罰則が廃止された場合(法律の変更)と、本件のように背景となる事実関係や行政告示のみが変更された場合(事実の変更)を区別する。司法試験の答案上では、本判例を根拠に「事実の変更」に該当する事案(経済情勢の変化に伴う統制解除等)では行為時法が適用される旨を論証する際に使用する。
事件番号: 昭和24(れ)96 / 裁判年月日: 昭和25年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の罪において、犯行後に価格指定の告示が廃止された場合であっても、刑法6条の「法律の変更」には当たらず、行為時法により処断されるべきである。これは経済情勢の変遷に伴う事実上の変更に過ぎず、廃止前になされた違反行為の可罰性を否定するものではない。 第1 事案の概要:被告人は、当時の物価庁…