判旨
物価統制令違反の罪において、犯行後に価格指定の告示が廃止された場合であっても、刑法6条の「法律の変更」には当たらず、行為時法により処断されるべきである。これは経済情勢の変遷に伴う事実上の変更に過ぎず、廃止前になされた違反行為の可罰性を否定するものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、犯罪後の法令改正により刑が廃止された場合に免訴となる(刑訴法337条2号、刑法6条)ところ、物価統制令に基づく価格指定告示の廃止が「法律の変更」による刑の廃止に該当するか、あるいは単なる事実上の変更に留まるかが論点となる。
規範
物価統制令違反行為に対しては、犯行後において価格を指定した告示が廃止された場合であっても、刑法6条の「法律の変更」には該当せず、行為時法をもって処断すべきである。これは、特定の物資に対する価格制限の解除が、過去の違反行為の不法性を否定する趣旨ではなく、単なる事実上の変遷に基づく措置と解されるためである。
重要事実
被告人は、当時の物価庁告示によって統制額が指定されていた野菜を販売し、物価統制令違反の罪に問われた。しかし、当該犯行が行われた後、裁判の結論が出るまでの間に、野菜の統制額を指定していた当該物価庁告示が廃止された。被告人側は、処罰の根拠となる法令が廃止されたことを理由に、免訴の裁判を求めて上告した。
あてはめ
最高裁は、先行する大法廷判決(昭和25年10月11日判決)を引用し、物価統制令違反における告示の廃止は「法律の変更」をもたらすものではないと判示した。本件においても、犯行後に野菜の統制額を指定した告示が廃止されているが、これは物価情勢という事実上の事態の変化に応じた措置に過ぎない。したがって、告示が廃止されたとしても、行為時に存在した不法性や可罰性が事後的に消滅するものではないと評価される。
結論
被告人の罪責には告示の廃止は何ら影響を及ぼさない。したがって、免訴の請求は認められず、行為時法に従って処断される。
実務上の射程
限時法(又はそれに類する法令)の効力に関する重要な判例である。行政的規制を内容とする刑罰法規において、情勢変化に伴う規制解除(告示の廃止等)がなされた場合でも、遡及的に処罰を免れることはできないという「事実上の変更」論の根拠として答案上使用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2243 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の犯罪成立後、価格指定の告示が将来に向かって廃止されたとしても、それは刑罰そのものを廃止するものではない。したがって、行為当時に有効であった価格制限に違反した行為については、その後の告示廃止にかかわらず刑罰を科すことができる。 第1 事案の概要:被告人等は昭和24年3月中、当時の物価…