一 原判決が確定した事実は被告人が統制額を超過する価額で甘藷を販売する目的でこれを所持していたという物価統制令第一三条ノ二違反の事実であつて、右事実を同条違反の罪に問擬する場合には、その行為の当時その物資に統制額が存すればよいので、その統制額を指定した告示の適用を判決において示す必要はない。 二 昭和二二年九月二八日物価庁告示第八〇四号にいわゆる「その他の菓子」とは、同告示別表(規格表)に掲げる規格に誤当しない菓子をいい(同告示第二販売条件その他の六参照)同告示別表に掲げる規格に該当する菓子とは食糧管理法並に砂糖需給調整規則に違反しない原料を使用し、且同告示規格に合致する割合で配合製造したものをいい、食糧管理法並に砂糖需給調整規則に違反した原料を使用して製造したものは同告示別表に掲げる規格に該当しないものとしていわゆる「その他の菓子」にあたるものと解すべきである。
一 物価統制令第一三条ノ二違反の擬律と告示の摘示の要否 二 昭和二二年九月二八日物価庁告示第八〇四号にいわゆる「その他の菓子」の意義
物価統制令13条ノ2,物価統制令13ノ2,旧刑訴法360第1項,昭和22年9月28日物価庁告示408号
判旨
物価統制令に基づく価格統制額の告示が犯罪後に廃止されたとしても、それは単なる事実の変化に過ぎず、刑法6条及び刑事訴訟法402条(旧363条2号)にいう「法律の改廃による刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
物価統制令に基づく価格統制額を指定する告示が、行為後に廃止された場合、刑事訴訟法における「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」として免訴すべきか。
規範
犯罪後の法令により刑が廃止されたとき(刑訴法402条、旧363条2号)とは、刑罰権を消滅させる趣旨の法規の改正が行われた場合を指す。これに対し、経済情勢の変化等に伴い価格統制の必要がなくなったとして行われる統制額の廃止(告示の失効)は、単なる事実の変化に過ぎず、刑の廃止には該当しない。
重要事実
被告人は、当時の物価庁告示で定められた統制額を超過する対価で「甘藷飴」を販売する目的で所持し、物価統制令違反に問われた。一審・二審ともに有罪判決が下されたが、上告審係属中に、当該「甘藷飴」に関する販売価格の統制額を定めた告示が廃止され、価格統制が解除された。
あてはめ
本件において、被告人の行為時に有効であった昭和22年物価庁告示第804号は、昭和25年物価庁告示第470号によって廃止された。しかし、この廃止は経済事情の変遷に基づき、特定の物資について一時的な価格統制の必要がなくなったという事実上の理由によるものである。物価統制令そのものが廃止されたわけではなく、過去の違反行為に対する可罰性を否定する趣旨(刑罰権の消滅)ではないから、依然として処罰は免れない。
結論
統制額の廃止は「刑の廃止」に当たらないため、免訴の言い渡しをすべきとの主張は理由がなく、上告を棄却する。
実務上の射程
いわゆる「限時法」や「事実の変化」と「法律の改廃」の区別に関する重要判例。物価統制や経済規制の分野において、違反行為当時の規制が解除されたとしても、遡及して無罪(免訴)にはならないという法理を確立したもので、刑法6条の解釈において不可欠な射程を有する。
事件番号: 昭和25(れ)714 / 裁判年月日: 昭和26年2月2日 / 結論: 棄却
論旨は氷の販売価格の統制額は昭和二五年三月三一日物価庁告示第二四四号により同年四月五日から廃止されたから原判決後刑の廃止ありたる場合にあたると主張する。しかし告示の廃止が旧刑訴第三六三条の「犯罪後ノ法令ニ依リ刑ノ廃止アルタルトキ」に該当しないことは既に当裁判所の判例としているところである。(昭和二三年(れ)第八〇〇号、…