論旨は氷の販売価格の統制額は昭和二五年三月三一日物価庁告示第二四四号により同年四月五日から廃止されたから原判決後刑の廃止ありたる場合にあたると主張する。しかし告示の廃止が旧刑訴第三六三条の「犯罪後ノ法令ニ依リ刑ノ廃止アルタルトキ」に該当しないことは既に当裁判所の判例としているところである。(昭和二三年(れ)第八〇〇号、同二五年一〇月一一日大法廷判決参照)従つて論旨は理由がない。
氷の販売価格の統制額に関する告示の廃止と刑の廃止
旧刑訴法363条3号,昭和25年3月31日物価庁告示244号
判旨
物価統制令に基づく販売価格の統制額を定めた告示が廃止されたとしても、刑訴法411条5号(旧刑訴法363条)の「刑の廃止」には該当しない。
問題の所在(論点)
物価統制令に基づく価格制限の告示が廃止されたことが、旧刑事訴訟法363条2号(現行法411条5号参照)にいう「犯罪後の法令により刑の廃止ありたるとき」に該当するか。
規範
特定の事態に対処するための臨時的措置として制定された法令が、その後の事態の変遷により廃止されたとしても、それは単なる事実上の変更にすぎず、刑法6条及び刑事訴訟法411条5号(旧363条2号)にいう「刑の廃止」には当たらない(いわゆる限時法および事実の変更の法理)。
重要事実
被告人が氷の販売価格に関し、当時の物価統制令に基づき告示された制限額を超えて販売したとして起訴された。しかし、原判決後の昭和25年3月31日、物価庁告示第244号により当該氷の販売価格の統制額が廃止されたため、弁護人は「犯罪後の法令により刑の廃止があったとき」に該当すると主張して上告した。
あてはめ
本件における氷の販売価格の統制は、当時の経済状況に鑑みた臨時的な物価抑制措置である。このような告示の廃止は、当該行為自体の可罰性を否定する法律学的見地の変更(反省的考慮)に基づくものではなく、経済情勢の変化という事実上の変更に伴う措置にすぎない。したがって、法令の改廃により処罰規定自体が失効したわけではなく、過去の違反行為の可罰性は維持される。
結論
告示の廃止は「刑の廃止」には該当しないため、原判決後における刑の廃止を理由とする上告は理由がなく、棄却される。
実務上の射程
法令改正時の経過措置が不明確な場合における「法の変更」と「事実の変更」の区別において活用される。特に経済事犯等、一時的な行政目的のために課される規制の廃止については、原則として本判例の法理に基づき、遡及的な免訴(刑の廃止)は否定される傾向にある。
事件番号: 昭和25(れ)1145 / 裁判年月日: 昭和26年1月23日 / 結論: 棄却
一 原判決が確定した事実は被告人が統制額を超過する価額で甘藷を販売する目的でこれを所持していたという物価統制令第一三条ノ二違反の事実であつて、右事実を同条違反の罪に問擬する場合には、その行為の当時その物資に統制額が存すればよいので、その統制額を指定した告示の適用を判決において示す必要はない。 二 昭和二二年九月二八日物…