昭和二一年一〇月二四日物価庁告示第一三七号が昭和二四年八月一五日限り廃止されたことは所論のとおりであるが、物価統制令第三条違反の行為があつた後に同令に基く統制額指定の告示が廃止されても旧刑訴第三六三条にいわゆる「犯罪後ノ法令ニ依リ刑ノ廃止アリタルトキ」に当らないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第八〇〇号第二五年一〇月一一日大法廷判決参照)
昭和二一年一〇月二四日物価庁告示第一三七号(度量器、計算器等)の廃止と刑の廃止
旧刑訴法363条3号,昭和25年10月24日物価庁告示137号
判旨
物価統制令に基づく統制額指定の告示が犯罪後に廃止されたとしても、刑法6条(および旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法律により刑の廃止があったとき」には該当しない。
問題の所在(論点)
物価統制令に基づく統制額指定の告示が、事後に廃止された場合、刑法6条および旧刑訴法363条2号(現行刑訴法337条2号)にいう「犯罪後の法律により刑の廃止があったとき」に該当するか。
規範
刑法6条の「法律(犯罪後の法律により刑の廃止があったとき)」の意義について、単なる事実関係の変更(政策的変更)に伴う規制の改廃はこれに含まれない。すなわち、行為当時に処罰の根拠となった強行法規(本件では物価統制令)自体が廃止されない限り、その具体的運用の細目である告示等の改廃は、刑の廃止にあたらない。
重要事実
被告人が物価統制令3条に違反する行為(統制額を超える価格での取引等)を行った。しかし、当該行為の後に、処罰の根拠となっていた物価庁告示(統制額を指定するもの)が廃止されたため、弁護人は「犯罪後の法律により刑の廃止があった」として免訴(旧刑訴法363条2号)を主張した。
あてはめ
本件において、物価統制令3条という処罰の根拠となる基本法規は依然として存続している。廃止されたのはあくまで同令に基づき具体的な価格を規定していた告示にすぎない。このような告示の廃止は、経済情勢の変化に応じた事実関係の変更に伴う技術的・政策的な措置であり、法律そのものが変更されて刑が廃止されたものとは評価できない。したがって、犯罪後の法律による刑の廃止があったとはいえない。
結論
物価統制令3条違反の行為後、統制額指定の告示が廃止されても、刑の廃止があったときには当たらず、被告人を処罰することは適法である。
実務上の射程
限時法や委任命令・告示の改廃が刑法6条の「刑の廃止」にあたるかという論点(いわゆる法律の変更と事実の変更の区別)において、判例の基本的な立場を示すものである。答案上は、単なる政策的・事実的変更(事実の変更)であれば刑の廃止にあたらず、処罰が可能であると論じる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和25(れ)1872 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令に基づき指定された統制額の告示が犯行後に廃止されたとしても、刑法6条及び旧刑訴法363条2号(現行刑訴法337条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人らは、紙袋について大蔵省告示により定められた統制額を超えて取引を行ったとして、物価…