判旨
物価統制令違反の犯罪成立後、価格指定の告示が将来に向かって廃止されたとしても、それは刑罰そのものを廃止するものではない。したがって、行為当時に有効であった価格制限に違反した行為については、その後の告示廃止にかかわらず刑罰を科すことができる。
問題の所在(論点)
犯罪成立の前提となっていた価格指定の告示が事後的に廃止された場合、刑の廃止があったものとして処罰を免れるか(限時法の効力と刑の廃止の成否)。
規範
特定の行政上の規制を前提とする処罰規定において、犯罪成立後にその前提となる告示等の行政処分が将来に向かって廃止されたとしても、特段の事情のない限り、それは法律の改廃による刑の廃止(刑法6条、刑訴法337条2号)には該当せず、行為時の違法性は左右されない。
重要事実
被告人等は昭和24年3月中、当時の物価統制令および昭和23年物価庁告示第647号による価格制限に違反する行為を行った。その後、当該価格指定の告示が廃止されたため、被告人側は「刑罰法規のない行為に対し刑罰を科したものである」として、刑の廃止を理由に無罪または免訴を主張して上告した。
あてはめ
被告人等の本件行為は昭和24年3月に行われており、当時、物価統制令3条、4条、33条および昭和23年物価庁告示647号は有効に存在していた。犯罪成立後に価格指定の告示が将来に向かって廃止されたとしても、それは事実関係の変化に基づく規制の改廃にすぎず、刑罰法規そのものを廃止する趣旨ではない。したがって、行為時に存在した刑罰規定を適用して処罰することは適法であり、刑法6条等の適用はないと解される。
結論
告示の廃止は刑の廃止には当たらないため、行為当時の法令に基づき被告人を処罰した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
法令の変更が「法律の改廃による刑の廃止」に当たるか、単なる「事実関係の変化」にすぎないかを区別する際のリーディングケースである。答案上は、行政目的を達するための告示等の変更は、特段の事情がない限り、過去の違反行為の可罰性を消滅させない(いわゆる法律状態の変更ではなく事実状態の変更とする)構成をとる際に引用する。
事件番号: 昭和25(あ)2911 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の犯罪成立後、価格指定の物価庁告示が廃止されたとしても、それは刑罰の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が物価統制令に違反する行為を行った後、当該行為の処罰の基準となっていた価格指定の物価庁告示が廃止された。被告人側は、この告示の廃止が刑罰の廃止に当…