所論A株式会社に対する昭和二〇年一一月一一日商工省工務局長第一二四九号による許可価格は、昭和一四年一〇月一八日勅令七〇三号価格等統制令七条一項但書に基く許可価格であるから、昭和二一年三月三日勅令一一八号物価統制令四六条の規定により相当の行政官庁が同令三条一項但書又は三一条の規定に依り当該価格等に付為したる許可と看做されるものである。されば、これにつき特に所論のごとき処分及び告示を要しないこというまでもない。尤も同令四六条にいわゆる許可は、旧令すなわち価格等統制令七条一項の規定により行政官庁の為した価格等の額の指定ある場合の許可であつて、被告人並びに被告会社は、いずれも前記許可を受けたA株式会社に属してないから、物価統制令三条又は三一条の許可を受けた価格等の受領者又は支払者といえない。従つて、被告人等の本件地下足袋の卸売販売価格については右許可価格によるべきものではなく、同令四三条により当時同令四条又は三一条の規定により為した統制額の指定と看做される右価格等統制令七条一項に依る価格等の額の指定である昭和二〇年一月二七日農商省告示五三号の地下足袋の最高販売価格によるべきものと解するを相当とする。
A株式会社に対する許可価格と同会社に属しない被告人の地下足袋卸売販売に関する準拠価格
物価統制令43条,物価統制令46条,物価統制令3条,物価統制令4条,物価統制令31条,価格等統制令(昭和14年勅令703号)7条1項
判旨
物価統制令違反の犯罪成立後に価格指定の告示が廃止されたとしても、それは単なる事実の変化に過ぎず、刑法6条及び刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反の罪が成立した後に、その前提となる行政上の価格指定(告示)が廃止された場合、刑法6条の「犯罪後の法律により刑の変更があったとき」や、刑訴法337条2号の「刑の廃止」に該当するか(法令の改廃か事実の変化か)。
規範
物価統制令違反の犯罪成立後、当該価格指定の告示が廃止されたとしても、そのことによって直ちに当該行為に係る刑罰が廃止されたものとは解されない(事実の変化説)。
重要事実
被告人は、物価統制令に基づき指定された地下足袋の最高販売価格を超えて卸売販売を行った。しかし、犯罪成立後、その根拠となっていた価格指定の告示が廃止されたため、被告人は「刑の廃止」があったとして免訴等を主張した。
あてはめ
最高裁は、物価統制令違反の犯罪成立後に価格指定の告示が廃止されても、その刑罰を廃止するものではないとする累次の判例を維持した。本件において、被告人は特定の会社に対する許可価格(8円30銭)の適用を主張したが、被告人は当該許可を受けた者ではないため、本来適用されるべきは告示による指定価格(2円40銭)である。告示が廃止されたとしても、それは当時の経済情勢に応じた規制の変更という事実の変化に留まり、処罰根拠となる法令そのものの改廃(刑の廃止)には当たらないと解される。
結論
犯罪成立後の価格指定の廃止は刑の廃止に当たらず、被告人を処罰することは適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
限時法や行政上の補充的規定が変更された場合の「法律の変更」の成否に関する重要判例である。行政的規制を内容とする経済刑法において、政策上の必要性から告示が変更・廃止されても、過去の違反行為の可罰性は維持されるという「事実の変化」の理論を示すものとして答案で活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2243 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の犯罪成立後、価格指定の告示が将来に向かって廃止されたとしても、それは刑罰そのものを廃止するものではない。したがって、行為当時に有効であった価格制限に違反した行為については、その後の告示廃止にかかわらず刑罰を科すことができる。 第1 事案の概要:被告人等は昭和24年3月中、当時の物価…