判旨
物価統制令違反の犯罪成立後、価格指定の物価庁告示が廃止されたとしても、それは刑罰の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。
問題の所在(論点)
犯罪成立後に根拠となる行政告示が廃止された場合、刑事訴訟法411条5号の「刑の廃止」に該当し、被告人を処罰できなくなるか。
規範
特定の取締法規(物価統制令等)に違反する犯罪が成立した後、その具体的基準を定めていた告示等の行政措置が変更・廃止されたとしても、特段の事情がない限り、それは事実関係の変遷に伴う措置にすぎず、刑罰そのものを廃止(法改正による処罰の否定)する趣旨ではない。
重要事実
被告人が物価統制令に違反する行為を行った後、当該行為の処罰の基準となっていた価格指定の物価庁告示が廃止された。被告人側は、この告示の廃止が刑罰の廃止に当たるとして、免訴等を求めて上告した。
あてはめ
最高裁判所は、物価統制令違反の犯罪が成立した後に価格指定の物価庁告示が廃止されたとしても、それは単なる事実上の変更にすぎず、刑罰を廃止するものではないとする。これは当裁判所の累次の判例(いわゆる限時法や事実の変更の法理)による判断であり、本件においても同様に解される。したがって、告示の廃止によって犯罪が事後的に消滅したとはいえない。
結論
物価庁告示の廃止は刑罰の廃止に当たらないため、有罪とした原判決に誤りはなく、上告を棄却する。
実務上の射程
法令変更と刑の廃止(刑法6条、刑訴法337条2号等)の区別に関する重要判例である。行政法規を補充する告示等の変更が「法律の変更」に該当するかについては、処罰の根拠となった法の目的に照らし、事実上の変更(時勢の変遷)か法的評価の変更かを区別する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2408 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
物価庁の告示が業者の統制額を定めた場合には業者ではない者でも業者と同一の取引をするときは業者に対する統制額が適用されるものであるから統制額違反事件においては必ずしも業者であるか否かを確定判示しなくとも差支えないものである。