判旨
物価統制令違反の罪が成立した後に、統制額を指定した告示が廃止されたとしても、それは刑罰を廃止するものではないため、免訴の事由にはあたらない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反罪の成立後に統制額の指定(告示)が廃止された場合、刑事訴訟法411条5号の「刑の廃止」に該当し、免訴を言い渡すべきか。
規範
特定の事案において適用された罰則の根拠となる告示が、事後に廃止されたとしても、それが直ちに刑事訴訟法411条5号(刑の廃止)に該当し免訴を言い渡すべき事由となるわけではない。法令の改廃が事実上の事情の変化(経済情勢の変動等)に基づく場合は、行為時の違法性を否定するものではなく、刑罰権は消滅しない。
重要事実
被告人は、物価統制令に基づく告示により指定された統制額を超えて取引を行い、同令違反の罪に問われた。しかし、当該罪の成立後、有罪判決が確定する前に、対象となっていた統制額を指定する告示が廃止された。被告人側は、これが刑の廃止(刑事訴訟法411条5号)に該当するとして、免訴を主張し上告した。
あてはめ
最高裁判所大法廷の先例(昭和25年10月11日判決)によれば、物価統制令違反罪において統制額を指定した告示が廃止されたとしても、それは「刑罰を廃止するもの」ではないと解される。本件においても、告示の廃止は単なる経済情勢の変化に応じた措置にすぎず、法令自体の改廃により処罰の必要性が否定された(刑の廃止)とみることはできない。したがって、被告人の免訴の主張には理由がない。
結論
本件告示の廃止は刑の廃止にはあたらないため、被告人に対して免訴を言い渡すことはできず、上告は棄却される。
実務上の射程
いわゆる「限時法」や「法令の事実上の変更」に関する論点である。告示等の補充的な規定が改廃された場合、それが法律の趣旨に照らして反省的考慮に基づく改廃(刑の廃止)か、単なる事実上の変動に伴うもの(刑の存続)かを区別する判断枠組みとして機能する。答案上は、本判例を引用し、経済情勢の変化に伴う告示廃止は後者に該当すると論証する際に用いる。
事件番号: 昭和25(あ)2170 / 裁判年月日: 昭和26年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】経済統制法違反の犯罪成立後に、根拠となる告示が廃止されたとしても、刑法6条の「刑の廃止」には当たらず、処罰を免れるものではない。 第1 事案の概要:被告人は経済統制法に違反する行為を行ったが、犯罪成立後、当該違反行為の根拠となっていた告示が廃止された。被告人側は、告示の廃止が刑罰の廃止にあたるとし…