判旨
物価統制令違反の行為があった後に、同令に基づく統制額を指定した告示が廃止されたとしても、法律(刑罰規範)自体が変更されたわけではないため、なお行為時の法令によって処罰される。
問題の所在(論点)
物価統制令違反の行為後に、その具体的要件を補充する告示が廃止された場合、刑罰の廃止(刑訴法411条5号、刑法6条等)に該当し、処罰を免れるか。
規範
犯罪後の法令の改廃により、当該行為が犯罪を構成しなくなった場合には処罰できないが、法令自体に変更がなく、その委任に基づく個別的な制限措置(告示等)が事実上の事情変更により廃止されたに過ぎない場合は、刑法6条の「法律の変更」には当たらず、なお行為時の法令を適用して処罰すべきである。
重要事実
被告人は、水飴およびぶどう糖の統制額を定めた物価庁告示(昭和23年告示233号)に違反する取引を行ったとして物価統制令3条違反で起訴された。原審判決の時点では当該告示による指定は有効に存続していたが、その後、新たな告示(昭和25年告示283号)により当該統制額指定の告示が廃止された。被告人は、告示の廃止により処罰の根拠が失われたとして上告した。
あてはめ
本件において、物価統制令3条という刑罰規範自体は存続しており、変更されたのはその委任に基づく特定の価格指定(告示)に過ぎない。このような告示の改廃は、物価情勢等の経済的事実の変動に対応する「事実の変更」に留まるものであり、法律が定めた処罰の必要性そのものを否定する「法律の変更」には当たらない。したがって、行為時に有効であった告示に違反した事実は、その後の告示廃止によってもその可罰性を左右されないというべきである。
結論
行為時の法令によって処罰されるべきであり、原判決の判断に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
いわゆる「限時法」や「事実の変更」に関する論点である。白地刑法において、委任の根拠となる法律が存続している一方で、具体的基準を定める告示等が廃止された場合に、行為時法の適用が維持されるか(法律の変更に当たるか)を判断する基準として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1110 / 裁判年月日: 昭和26年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の罪が成立した後に統制額指定の告示が廃止されたとしても、既に成立した犯罪の可罰性は左右されない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令に基づく統制額を超える価格で取引を行ったとして、同令違反の罪に問われた。しかし、当該犯罪の成立後、公判審理等の過程において、対象となっていた統制額を…