判旨
犯罪後の法令改正により統制額が廃止されたとしても、それが将来に向かっての廃止である限り、既に成立した物価統制令違反の罪の刑罰を廃止するものではない。
問題の所在(論点)
犯罪後に、処罰の根拠となっていた統制額が行政上の告示等により将来に向かって廃止された場合、刑法6条の「犯罪後の法律により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴の対象となるか。
規範
犯罪後の告示等によって統制額が将来に向かって廃止されたとしても、そのことによって、既に実行された当該統制違反行為に係る刑罰が廃止される(刑法6条、刑訴法337条2号)わけではない。
重要事実
被告人は物価統制令違反の罪に問われたが、当該犯罪行為の後、昭和24年10月15日の告示によって本件の統制額が将来に向かって廃止された。被告人側は、この告示による統制廃止が刑の廃止にあたると主張して上告した。
あてはめ
本件における統制額の廃止は、昭和24年の告示によって将来に向かってなされたものである。これは、過去の違反行為に対する評価を改め、遡及的に刑を廃止する趣旨ではない。したがって、既に成立している物価統制令違反の罪の成立を妨げるものではなく、刑罰権は消滅しないと解される。
結論
本件統制額の廃止は既に成立した罪の刑罰を廃止するものではないため、被告人を処罰することは適法であり、免訴とはならない。
実務上の射程
いわゆる「限時法」や「事実の変更」の議論において、法令の改廃が「法律の変更」にあたるか、単なる「事実の変更」にとどまるかを区別する際の古典的なリーディングケースである。実務上は、行政目的の達成や経済情勢の変化に伴う規制緩和が、過去の違法行為の反価値性を否定する趣旨(法律の変更)か、単なる将来的な政策変更(事実の変更)かを判断する枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和25(れ)1145 / 裁判年月日: 昭和26年1月23日 / 結論: 棄却
一 原判決が確定した事実は被告人が統制額を超過する価額で甘藷を販売する目的でこれを所持していたという物価統制令第一三条ノ二違反の事実であつて、右事実を同条違反の罪に問擬する場合には、その行為の当時その物資に統制額が存すればよいので、その統制額を指定した告示の適用を判決において示す必要はない。 二 昭和二二年九月二八日物…