判旨
限時法の性質を有する法令が廃止された場合であっても、附則に「改正前の行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の経過規定があるときは、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。
問題の所在(論点)
有効期間を画した限時法的な性質を持つ法令が廃止された場合において、附則に経過規定があるとき、その廃止は刑事訴訟法上の「刑の廃止」に該当し、処罰を免れることになるか。
規範
法令が限時法としての性質を有する場合、その有効期間経過後または廃止後であっても、失効前の違反行為について処罰を存続させる旨の経過規定(存続条項)が存する限り、当該法令の改廃は「刑の廃止」には当たらない。
重要事実
被告人が臨時物資需給調整法に基づく薪炭需給調整規則に違反する行為を行ったが、その後に同規則が改正・廃止された。しかし、改正規則(昭和24年農林省令第74号)及び廃止規則(昭和25年農林省令第15号)の各附則には、改廃前の行為に対する罰則の適用については旧規則がなお効力を有する旨の経過規定が置かれていた。
あてはめ
本件で適用される臨時物資需給調整法および薪炭需給調整規則は、社会情勢に応じた需給調整を目的とする限時法の性質を有する。同規則の改廃に際しては、各附則において、改廃前の行為に対する罰則の適用につき旧規則を適用する旨が明記されている。したがって、法令の改廃は事実上の政策変更に伴うものであり、過去の違法性評価を否定する趣旨ではないから、刑の廃止とは認められない。
結論
本件行為に対しては、改廃にかかわらず行為当時の規則が適用され、刑の廃止には当たらないため、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)4912 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】臨時物資需給調整法に基づく石油製品配給規則等が失効した場合であっても、法律の附則に「失効前の行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」旨の経過規定があるときは、刑法6条(刑の廃止)には当たらず、処罰は維持される。 第1 事案の概要:被告人は、当時の「石油製品配給規則」等に違反する行為…
限時法の失効・改廃が「刑の廃止」に当たるかという論点において、経過規定が存在する場合には、本判決と同様の論理で処罰が維持される。実務上は、経過規定がない場合であっても、法の趣旨が事実上の変更(時局の変遷)に留まるのか、それとも反省的考慮に基づくものかを区別する判断枠組みの基礎となる。
事件番号: 昭和25(れ)1046 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
所論昭和二五年三月二七日農林省令第二七号附則の趣旨は加工水産物配給規則廃止前に行われた違反行為に対しては同規則廃止後も廃止前に行われた違反行為の罰則に関する範囲においては、これを廃止しない趣旨であつて、一旦廃止して更に罰則を設けるという趣旨でない故所論違憲論は前提を欠き採用できない。
事件番号: 昭和28(あ)2873 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が廃止された後も、当該法律の附則に基づき、廃止前の違反行為を処罰することは、憲法上の適正手続や刑罰不遡及の原則に反せず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資調整法違反の罪で起訴されたが、同法は有効期間の満了により廃止された。しかし、同法附則第2項但書には、法の失効後も失効前の行為につ…
事件番号: 昭和27(あ)2952 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】臨時物資需給調整法の失効前にした行為に対し、失効後も罰則の適用を認める経過規定が存在する場合、刑の廃止(刑訴法402条4号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が石油製品配給規則違反に問われた事案。同規則の根拠法である臨時物資需給調整法は、昭和27年7月1日以降廃止された。しかし、同法廃止…
事件番号: 昭和29(あ)738 / 裁判年月日: 昭和29年9月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律に基づき定められた規則等が廃止された場合であっても、経過規定等により刑の廃止にあたらないと解される場合には、刑法6条の「刑の変更」や刑訴法337条2号の「刑の廃止」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人らは、臨時物資需給調整法および石油製品配給規則に違反したとして起訴された。原審判決後、当…