判旨
臨時物資需給調整法に基づく石油製品配給規則等が失効した場合であっても、法律の附則に「失効前の行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」旨の経過規定があるときは、刑法6条(刑の廃止)には当たらず、処罰は維持される。
問題の所在(論点)
法律・規則の失効により、刑法6条および刑事訴訟法405条等にいう「刑の廃止」があったといえるか。特に、法律の附則により罰則の適用が制限的に維持されている場合の処罰の可否が問題となる。
規範
刑の変更(刑の廃止)の有無は、実質的な法状態の変動のみならず、法律の附則に設けられた経過規定(罰則の適用に関する存続規定)の有無により判断される。法律の失効後も、失効前の行為に対する罰則の適用について当該法律が効力を有する旨の明文規定がある場合には、刑の廃止があったとは認められない。
重要事実
被告人は、当時の「石油製品配給規則」等に違反する行為(統制違反)を行ったとして起訴された。その後、根拠法である「臨時物資需給調整法」に関連し、昭和27年法律第23号「国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律」の施行に伴い、当該規則等は昭和27年7月1日をもって失効した。しかし、同法附則4項には「失効前の行為に対する罰則の適用については、なお効力を有する」旨の規定が置かれていた。
あてはめ
本件における規則の失効は、単なる経済情勢の変化に伴う告示の廃止(価格統制の変更)とは異なり、法令の存続期間満了に伴うものである。しかし、新法(昭和27年法律第23号)の附則4項において、旧法が効力を有する間になされた行為に対する罰則の適用については、失効後もなお旧法が効力を有することが明示されている。したがって、当該行為時において違法であった行為の可罰性は維持されており、実質的にも形式的にも「刑の廃止」があった場合には当たらない。
結論
被告人の行為は依然として処罰の対象となり、刑の廃止を理由とする上告は理由がないため、棄却される。
事件番号: 昭和27(あ)2952 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】臨時物資需給調整法の失効前にした行為に対し、失効後も罰則の適用を認める経過規定が存在する場合、刑の廃止(刑訴法402条4号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が石油製品配給規則違反に問われた事案。同規則の根拠法である臨時物資需給調整法は、昭和27年7月1日以降廃止された。しかし、同法廃止…
実務上の射程
限時法(有効期間の定めのある法律)やその性質を有する法令の失効に伴う処罰の可否について、明文の経過規定がある場合の判断指針となる。いわゆる「限時法論」の文脈において、刑法6条の例外(または適用除外)を認める根拠として援用可能である。
事件番号: 昭和25(あ)1669 / 裁判年月日: 昭和27年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】限時法の性質を有する法令が廃止された場合であっても、附則に「改正前の行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の経過規定があるときは、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資需給調整法に基づく薪炭需給調整規則に違反する行為を行ったが、その後…
事件番号: 昭和27(あ)2831 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: その他
所論は大赦にかからない灯油等についてもその後の統制廃止により刑の廃止があつたと主張するのであるが、昭和二七年三月三一日法律第二三号国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律の附則四項によると、臨時物資需給調整法がなおその効力を有する間にした行為に対する罰則の適用については同法はその失効の日後もなおの効力…
事件番号: 昭和28(あ)2873 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が廃止された後も、当該法律の附則に基づき、廃止前の違反行為を処罰することは、憲法上の適正手続や刑罰不遡及の原則に反せず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資調整法違反の罪で起訴されたが、同法は有効期間の満了により廃止された。しかし、同法附則第2項但書には、法の失効後も失効前の行為につ…
事件番号: 昭和28(あ)2234 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】いわゆる限時法が有効期間を経過し、または告示の廃止により失効した場合であっても、それが特定の社会情勢への対処という事実上の必要に基づくものであれば、失効前の違反行為を処罰することは刑法6条および刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、臨時物資需給調整法に基…