判旨
臨時物資需給調整法の失効前にした行為に対し、失効後も罰則の適用を認める経過規定が存在する場合、刑の廃止(刑訴法402条4号等)には当たらない。
問題の所在(論点)
取締法規が廃止されたものの、附則により失効前の行為に罰則を適用する経過規定がある場合、刑の廃止にあたるか(刑罰権は消滅するか)。
規範
特定の取締法規が廃止された場合であっても、法律の附則等において、当該法律が効力を有する間にした行為に対する罰則の適用については、廃止後もなお従前の例による(または効力を有する)旨の経過規定が置かれているときは、刑の廃止があったものとは解されない。
重要事実
被告人が石油製品配給規則違反に問われた事案。同規則の根拠法である臨時物資需給調整法は、昭和27年7月1日以降廃止された。しかし、同法廃止の根拠となった法律(国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律)の附則4項には、旧法の失効前になされた行為に対する罰則の適用については、失効後もなお旧法が効力を有する旨の経過規定が置かれていた。
あてはめ
本件では、石油製品配給規則が昭和27年7月1日に廃止されている。しかし、関連法規の附則において「臨時物資需給調整法がなおその効力を有する間にした行為に対する罰則の適用については、同法は同項に規定する日後もなおその効力を有する」と明示されている。このような経過規定が存在する以上、廃止前にした被告人の行為に対する処罰根拠は失われておらず、刑の廃止があったという主張は法的に採用できない。
結論
被告人の行為について刑の廃止があったとは認められず、有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)4912 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】臨時物資需給調整法に基づく石油製品配給規則等が失効した場合であっても、法律の附則に「失効前の行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」旨の経過規定があるときは、刑法6条(刑の廃止)には当たらず、処罰は維持される。 第1 事案の概要:被告人は、当時の「石油製品配給規則」等に違反する行為…
法令が改正・廃止された際の時に関する効力(刑法6条)の問題。限時法や取締法規の改廃において「経過規定」がある場合は、事実上の変更か法律上の変更かの議論を待たず、当該規定により処罰が維持されることを示す際に用いる。
事件番号: 昭和25(あ)1669 / 裁判年月日: 昭和27年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】限時法の性質を有する法令が廃止された場合であっても、附則に「改正前の行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の経過規定があるときは、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資需給調整法に基づく薪炭需給調整規則に違反する行為を行ったが、その後…
事件番号: 昭和27(あ)2831 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: その他
所論は大赦にかからない灯油等についてもその後の統制廃止により刑の廃止があつたと主張するのであるが、昭和二七年三月三一日法律第二三号国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律の附則四項によると、臨時物資需給調整法がなおその効力を有する間にした行為に対する罰則の適用については同法はその失効の日後もなおの効力…
事件番号: 昭和25(れ)1046 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
所論昭和二五年三月二七日農林省令第二七号附則の趣旨は加工水産物配給規則廃止前に行われた違反行為に対しては同規則廃止後も廃止前に行われた違反行為の罰則に関する範囲においては、これを廃止しない趣旨であつて、一旦廃止して更に罰則を設けるという趣旨でない故所論違憲論は前提を欠き採用できない。
事件番号: 昭和28(あ)2873 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が廃止された後も、当該法律の附則に基づき、廃止前の違反行為を処罰することは、憲法上の適正手続や刑罰不遡及の原則に反せず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資調整法違反の罪で起訴されたが、同法は有効期間の満了により廃止された。しかし、同法附則第2項但書には、法の失効後も失効前の行為につ…