判旨
法律に基づき定められた規則等が廃止された場合であっても、経過規定等により刑の廃止にあたらないと解される場合には、刑法6条の「刑の変更」や刑訴法337条2号の「刑の廃止」には該当しない。
問題の所在(論点)
原審判決後に依拠法条である規則等が廃止された場合、刑訴法405条等の上告理由、あるいは刑訴法337条2号の免訴事由(刑の廃止)に該当するか。
規範
刑罰法令が改廃された場合、単なる事実上の変更にすぎないのか、それとも反省的考慮に基づく刑の廃止(刑訴法337条2号)といえるかが問題となる。経過規定等により旧法の効力が維持されている場合には、依然として処罰規定は存続しており、刑の廃止には当たらないと解すべきである。
重要事実
被告人らは、臨時物資需給調整法および石油製品配給規則に違反したとして起訴された。原審判決後、当該規則等が改正・廃止されたことを受け、弁護人は「原判決後に刑の廃止があった」として上告を申し立てた。しかし、当該法令の附則(臨時物資需給調整法附則2項、昭和24年石油製品配給規則附則5項)には、失効前または廃止前の行為に対する罰則の適用に関する経過規定が存在していた。
あてはめ
本件において、弁護人は規則の廃止をもって刑の廃止を主張するが、関連する臨時物資需給調整法附則2項および石油製品配給規則附則5項の規定を照合すると、廃止前の行為についてはなお従前の罰則を適用する旨が明示されている。したがって、当該法令の改廃は、従前の行為に対する処罰を否定する「刑の廃止」を意味するものではないことが明白である。よって、法令違反や刑の廃止があるとの主張は前提を欠く。
結論
本件における規則の廃止は「刑の廃止」には当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(あ)1669 / 裁判年月日: 昭和27年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】限時法の性質を有する法令が廃止された場合であっても、附則に「改正前の行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の経過規定があるときは、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資需給調整法に基づく薪炭需給調整規則に違反する行為を行ったが、その後…
限時法や行政規則の改廃時における経過規定の重要性を示す。司法試験においては、法令の改廃が「反省的考慮」に基づくものか「事実上の変更(物価変動等)」にすぎないかを判別する際、本判決のように附則の経過規定の有無が決定的な判断材料となる。
事件番号: 昭和28(あ)2873 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が廃止された後も、当該法律の附則に基づき、廃止前の違反行為を処罰することは、憲法上の適正手続や刑罰不遡及の原則に反せず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資調整法違反の罪で起訴されたが、同法は有効期間の満了により廃止された。しかし、同法附則第2項但書には、法の失効後も失効前の行為につ…
事件番号: 昭和27(あ)2831 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: その他
所論は大赦にかからない灯油等についてもその後の統制廃止により刑の廃止があつたと主張するのであるが、昭和二七年三月三一日法律第二三号国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律の附則四項によると、臨時物資需給調整法がなおその効力を有する間にした行為に対する罰則の適用については同法はその失効の日後もなおの効力…
事件番号: 昭和28(あ)2234 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】いわゆる限時法が有効期間を経過し、または告示の廃止により失効した場合であっても、それが特定の社会情勢への対処という事実上の必要に基づくものであれば、失効前の違反行為を処罰することは刑法6条および刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、臨時物資需給調整法に基…
事件番号: 昭和25(れ)1781 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
繊維製品の指定に関する商工省告示の廃止および衣料品配給規則の一部施行停止は、その廃止または施行停止以前に行われた違反行為の可罰性に何らの影響を与えるものではない。