繊維製品の指定に関する商工省告示の廃止および衣料品配給規則の一部施行停止は、その廃止または施行停止以前に行われた違反行為の可罰性に何らの影響を与えるものではない。
繊維製品の指定に関する告示の廃止および衣料品配給規則の一部施行停止と従前の行為の可罰性
臨時物資需給調整法附則2項,旧刑訴法363条
判旨
臨時物資需給調整法に基づく統制が事後に解除された場合であっても、同法附則に「失効前の行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」旨の経過規定がある以上、犯罪後の法令により刑が廃止された場合には当たらない。
問題の所在(論点)
物資の統制を定めた規則や告示が事後的に改廃され、事実上規制が緩和・撤廃された場合において、刑訴法337条2号(旧刑訴363条)の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴とすべきか。
規範
刑法6条及び刑事訴訟法337条2号(旧刑訴363条)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当するか否かは、当該法令の改廃が単なる事実上の変遷に基づくものか、反省的考慮に基づくものかにより区別される。もっとも、法律自体に「その時までになした行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」旨の経過規定が存在する場合、その趣旨に照らし、改廃以前の行為の可罰性は維持される。
重要事実
被告人は、雨外套(レインコート)を配給割当公文書と引き換えることなく買受け・販売した。これは当時の臨時物資需給調整法及び衣料品配給規則に違反する行為であった。しかし、その後の告示改正等により、当該製品の指定解除や一般衣料切符制度の停止が行われたため、弁護人は「犯罪後の法令による刑の廃止」に該当し、免訴とされるべきであると主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)2831 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: その他
所論は大赦にかからない灯油等についてもその後の統制廃止により刑の廃止があつたと主張するのであるが、昭和二七年三月三一日法律第二三号国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律の附則四項によると、臨時物資需給調整法がなおその効力を有する間にした行為に対する罰則の適用については同法はその失効の日後もなおの効力…
あてはめ
本件雨外套が統制繊維製品の指定から解除され、衣料品配給規則の一部が施行停止になったことは事実である。しかし、根拠法である臨時物資需給調整法附則2項但書には、同法が失効した際も「その時までになした行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」との経過規定が置かれている。この規定の趣旨に照らせば、下位の告示や規則の改廃があったとしても、それ以前に行われた違反行為の可罰性には何ら影響を与えないと解するのが相当である。
結論
本件は「犯罪後の法令による刑の廃止」には該当せず、免訴とはならない。したがって、被告人を処断した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
いわゆる限時法や、社会情勢の変化に伴い頻繁に改廃される経済統制法規における「法律の改廃」の射程を画する。特に法律自体に経過規定(罰則の存続条項)がある場合には、事実上の変遷か反省的考慮かを問うまでもなく、可罰性が維持されることを明確にした点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和26(れ)770 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
臨時物資需給調整法附則第二項但書は、同法失効後の規定であつて、同法はまだ失効していないのであるから、本件については同但書の適用はないのである。従つて、同但書が憲法一四条違反である旨の主張はその前提を欠き採用することはできない。
事件番号: 昭和24(れ)2240 / 裁判年月日: 昭和26年3月23日 / 結論: 棄却
被告人の所為に対し適用した衣料品配給規則第三条(昭和二二年商工省令第二五号)昭和二二年商工省告示第五八号は、臨時物資需給調整法に基いて制定せられたものであり、同法が所謂限時法の性格を有することは、同法第一条及び同法附則三項の規定によつて明確でわるから、右告示の廃止は旧刑訴第三六三条二号にいわゆる「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ…
事件番号: 昭和25(あ)1669 / 裁判年月日: 昭和27年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】限時法の性質を有する法令が廃止された場合であっても、附則に「改正前の行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の経過規定があるときは、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資需給調整法に基づく薪炭需給調整規則に違反する行為を行ったが、その後…
事件番号: 昭和28(あ)2234 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】いわゆる限時法が有効期間を経過し、または告示の廃止により失効した場合であっても、それが特定の社会情勢への対処という事実上の必要に基づくものであれば、失効前の違反行為を処罰することは刑法6条および刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、臨時物資需給調整法に基…