被告人の所為に対し適用した衣料品配給規則第三条(昭和二二年商工省令第二五号)昭和二二年商工省告示第五八号は、臨時物資需給調整法に基いて制定せられたものであり、同法が所謂限時法の性格を有することは、同法第一条及び同法附則三項の規定によつて明確でわるから、右告示の廃止は旧刑訴第三六三条二号にいわゆる「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタルトキ」に該当しないものと解するを正当とすることは当裁判所昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日言渡した大法廷判決(判例集四巻一〇号一九七二頁以下)の趣旨に照らし明らかである。
衣料品配給規則第三条(昭和二二年商工省第二五号)昭和二二年商工省告示第五八号の廃止と刑の廃止
臨時物資需給調整法1条,衣料品配給規則3条(昭和22・商工省令25号)昭和22年商工省告示58号,旧刑訴法363条2号
判旨
臨時物資需給調整法のように、特定の期間に限って効力を有する「限時法」に基づく告示が廃止されたとしても、特段の経過規定がある場合には、犯罪後の法令により刑が廃止されたもの(旧刑訴法363条2号、現刑訴法337条2号)には当たらない。
問題の所在(論点)
有効期間の定めがある臨時物資需給調整法(限時法)に基づき制定された告示が、事後的に廃止された場合、刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきか。
規範
特定の社会的経済的事態に対処するため、有効期間を限定して制定されたいわゆる「限時法」またはこれに基づく法令については、その有効期間経過後または法令の廃止後であっても、期間中の違反行為を処罰する旨の経過規定が存する場合には、刑法6条及び刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当しない。
重要事実
被告人は、衣料品の登録販売業者ではないにもかかわらず、指定繊維製品の販売業を行ったとして、臨時物資需給調整法4条1項、衣料品配給規則3条、及び昭和22年商工省告示58号違反として起訴された。しかし、原判決後の昭和24年6月1日に当該告示が廃止されたため、被告人は「犯罪後の法令により刑が廃止された」ものとして免訴されるべきであると主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)1464 / 裁判年月日: 昭和27年11月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】行政上の経済施策の変更に伴い、特定の物資に対する統制額の指定が廃止されたとしても、それは刑法6条にいう刑の廃止(刑訴法337条2号)には当たらず、行為当時の違法性を否定するものではない。 第1 事案の概要:被告人等は、物価統制令に基づき重油の販売価格が制限されていた時期に、統制額を超える価格で重油…
あてはめ
本件で適用された告示は、臨時物資需給調整法に基づいて制定されたものである。同法は1条及び附則2項の規定により、特定の目的のために期間を限定して制定された「限時法」の性格を有することが明らかである。また、同法附則2項には、法の失効後においても失効前の行為に対する罰則の適用を認める旨の特別の経過規定が存する。したがって、同法に基づく本件告示が廃止されたとしても、それは単なる事態の変遷に伴う制裁の終了を意味するものではなく、限時法的性質に基づく処罰の存続が認められるべきであるから、刑の廃止には当たらない。
結論
本件告示の廃止は「刑の廃止」には該当しない。したがって、原判決を支持し、上告を棄却する。
実務上の射程
限時法(およびそれに準ずる経済統制法規)の有効期間内に行われた違反行為について、期間経過後や告示廃止後の処罰可能性を論ずる際のリーディングケースである。答案上は、刑法6条の原則に対する例外として、当該法令の「限時法」としての性格と「経過規定」の有無を指摘し、実質的な処罰の必要性が消滅していないことを論拠とする。
事件番号: 昭和26(れ)1233 / 裁判年月日: 昭和27年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当たるとされる場合でも、特定の告示の廃止が事実上の変更にとどまる場合には、刑訴法337条2号の免訴事由には該当しない。 第1 事案の概要:被告人が、当時の法令および告示に基づき禁止されていた行為(詳細は判決文からは不明だが、先行判例の引用から物価統制令等に関連…
事件番号: 昭和25(れ)1781 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
繊維製品の指定に関する商工省告示の廃止および衣料品配給規則の一部施行停止は、その廃止または施行停止以前に行われた違反行為の可罰性に何らの影響を与えるものではない。
事件番号: 昭和27(あ)2831 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: その他
所論は大赦にかからない灯油等についてもその後の統制廃止により刑の廃止があつたと主張するのであるが、昭和二七年三月三一日法律第二三号国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律の附則四項によると、臨時物資需給調整法がなおその効力を有する間にした行為に対する罰則の適用については同法はその失効の日後もなおの効力…
事件番号: 昭和26(れ)717 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後に、同令に基づく価格統制額を指定した主務官庁の告示が廃止されたとしても、刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条に違反して、告示により指定された統制価格を超える価格で衣…