判旨
判決に適用法令の誤りがある場合であっても、適用されるべき正しい罰則が同一であり、その違法が判決の結果に影響を及ぼさないときは、原判決を破棄すべき理由にはならない。
問題の所在(論点)
判決における法令適用の誤りが、判決に影響を及ぼす著しい法令違反として、上告審による破棄事由(刑訴法411条1号等)に該当するか。
規範
判決における適用法令の違法が、刑事訴訟法411条等の破棄事由に該当するか否かは、その違法が判決の結論(結果)に影響を及ぼすか否かによって判断される。具体的には、誤って適用された法条と本来適用されるべき法条とを比較し、処断刑の範囲等の法的効果が実質的に同一であれば、当該違法は判決に影響を及ぼすものとは認められない。
重要事実
被告人は昭和24年3月14日に石油製品の配給に関する違反行為を行った。原判決は、この行為に対して石油製品配給規則11条を適用したが、弁護人は同条の適用に違法があるとして上告した。しかし、当該行為に対して本来適用されるべき罰則は、臨時物資需給調整法4条であり、原判決が適用した法条による罰則と実質的に同一の刑が科されるものであった。
あてはめ
原判決が昭和24年3月14日の行為に対して石油製品配給規則11条を適用した点には法令適用の誤り(違法)が認められる。しかし、当該行為に対して正しく適用されるべき罰則は、結局のところ臨時物資需給調整法4条に規定された刑にほかならない。したがって、法令適用の誤りがあったとしても、被告人に科される刑の範囲や法的地位に実質的な差異は生じておらず、この違法は原判決の結果に影響を及ぼすものとはいえない。
結論
法令適用の誤りはあるが、判決の結果に影響を及ぼさないため、原判決を破棄すべき理由にはならず、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(れ)511 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法令が改正された場合において、改正前の行為に改正後の規定を適用することは法の遡及適用に当たり原則として許されないが、併合罪の関係にある他の罪の法定刑に従って処断され、刑の量定に影響がない場合には、判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は臨時物資需給調整法違反…
判決書における法条の引用ミスや、実効的な刑に差異がない範囲での適用条文の誤りについて、一律に破棄自判を求めるのではなく、判決の結論に影響がないことを理由に維持する論理として機能する。司法試験においては、軽微な法令違反がある場合の破棄の必要性を論じる際の準拠となる。
事件番号: 昭和26(れ)1926 / 裁判年月日: 昭和26年12月11日 / 結論: 棄却
所論は、原判決が、被告人の犯罪事実第一の一に対し、昭和二三年六月一五日の改正前の指定生産資材割当規則第八条を適用すべきにかかわらず、改正後の第九条を適用したのは、法令によらない裁判であつて、憲法に違反するというのである。仮に原判決が誤つて、改正後の同規則を適用したものと解しても、本件において両者は、実質的に差異がないの…
事件番号: 昭和25(あ)406 / 裁判年月日: 昭和25年10月17日 / 結論: 棄却
本件において第一審判決は適用法令として臨時物資需給調整法第一条、第四条、衣料品配給規則第五条を掲げているが、同規則にいわゆる衣料品とは、その第一条第二項に基いて昭和二二年九月一〇日商工省告示第五八号によつて指定されているのであるから、臨時物資需給調整法の罰則を適用するには、衣料品配給規則第五条のほかに右告示第五八号を掲…
事件番号: 昭和26(れ)759 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、刑訴法施行法3条の2及び刑訴法408条に基づき、上告理由が不適法である場合、または職権による破棄の必要がない場合には、弁論を経ずに判決をもって上告を棄却できることを示した。 第1 事案の概要:弁護人が上告趣意書を提出して上告を申し立てたが、その内容が刑訴法405条に定める上告理由(憲法違…
事件番号: 昭和26(れ)674 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、被告人の上告趣意について刑事訴訟法405条の事由に該当しないとし、かつ同法411条を適用して原判決を破棄すべき著しい正義に反する事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、具体的な公訴事実の内容や下級審の判断、被告人が主張…