本件において第一審判決は適用法令として臨時物資需給調整法第一条、第四条、衣料品配給規則第五条を掲げているが、同規則にいわゆる衣料品とは、その第一条第二項に基いて昭和二二年九月一〇日商工省告示第五八号によつて指定されているのであるから、臨時物資需給調整法の罰則を適用するには、衣料品配給規則第五条のほかに右告示第五八号を掲げられなければならない。けだし衣料品配給規則第五条は右告示によつて、その内容が具備するからである。従つて原判決が右告示第五八号の適用をしなかつた第一審判決を維持したことは法令の違反あるものというべきであるが、被告人が買いうけた判示紺織木綿は右商工省告示の指定する衣料品に該当することが明白である以上、右告示を遺脱して処断したとしても刑の量定その他において右告示を適用した場合と異る処はないから前示の法令違反があるとしても刑訴法第四一一条第一号により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
臨時物資需給調整法違反罪において適用すべき告示を遺脱した違法と刑訴法第四一一条
刑訴法411条1号,刑訴法335条,臨時物資需給調整法1条,衣料品配給規則
判旨
行政規則の内容を補充する告示等の適用を遺脱した判決であっても、対象物が当該告示等の指定に該当することが明白で刑の量定等に影響を及ぼさない場合には、刑訴法411条1号による破棄を要しない。
問題の所在(論点)
白紙刑法の補充規定となる告示等の適用を遺脱した法令適用の誤りが、刑訴法411条1号(判決に影響を及ぼすべき法令の違反があって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとき)に該当するか。
規範
罰則を適用するにあたり、その内容を実質的に具備する告示等の適用を遺脱した場合には法令違反となるが、当該違反があっても、対象物が当該告示の指定する対象に該当することが明白であり、刑の量定その他において結論に差異が生じないときは、判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない(刑訴法411条1号)。
事件番号: 昭和25(あ)1290 / 裁判年月日: 昭和26年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が主張する事実関係が原審によって認められない以上、前提となる統制の撤廃といった事情も認められず、刑訴法411条5号(刑の廃止)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が統制の撤廃された「特綿糸」の取引を主張して上告したが、第一審判決において本件綿糸が特綿糸である事実は認められていなかった。…
重要事実
被告人がAから紺織木綿を買受けた行為が、衣料品配給規則5条違反として起訴された。第一審判決は、臨時物資需給調整法及び衣料品配給規則5条を適用して有罪としたが、同規則の「衣料品」の範囲を具体的に指定している昭和22年商工省告示第58号を適用法令として掲げていなかった。原判決もこの第一審判決を維持したため、法令適用の違法があるとして上告された。
あてはめ
衣料品配給規則5条は告示によってその内容が具備されるものであるから、同告示を掲げなかった原判決には法令違反がある。しかし、被告人が買受けた「紺織木綿」は当該告示が指定する「衣料品」に該当することが明白である。したがって、告示の適用を遺脱したとしても、刑の量定等の結論において、告示を正しく適用した場合と異なる結果を招くものではない。ゆえに、この程度の瑕疵をもって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまではいえない。
結論
本件の法令適用遺脱は、刑の量定等に影響を及ぼさないため、刑訴法411条1号の破棄事由には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
司法試験の刑事訴訟法においては、判決に影響を及ぼすべき法令の違反(411条1号等)の具体例として、形式的な法令適用の誤りがあっても実質的な結論(有罪・無罪や刑期)に影響がない場合の処理を説明する際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和25(あ)1159 / 裁判年月日: 昭和26年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文は、上告理由が刑事訴訟法405条に該当せず、かつ同法411条を適用すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案であるが、具体的な事実関係(罪名、犯行態様等)については、本判決文の記載からは不明である。 第2 問題の所…
事件番号: 昭和25(あ)404 / 裁判年月日: 昭和25年10月26日 / 結論: 棄却
一 昭和二四年一〇月二五日人絹糸が指定生産資材から除外されたことは所論のとおりである。しかし、人絹糸が将来に向つて統制から解除されたからといつて、既往においてその統制に違反し成立した犯罪の刑を廃止したと解すべき何等の理由も存しない。 二 判決において認定された犯罪事実は、単にいわゆる事実摘示の部分に局限して故らに狭く理…
事件番号: 昭和25(あ)2173 / 裁判年月日: 昭和26年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が刑事訴訟法405条に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を破棄すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、判決文からは具体的な公訴事実や下級審の判断内容等の詳細は不明である。 第2 問題の所在(論点):被…
事件番号: 昭和25(あ)723 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
一 衣料品配給規則第五条違反の罪は、衣料品を所定の割当公文書と引換えないで譲渡する罪であるから、その譲渡行為がある毎に犯罪が成立するものといわなければならない。 二 裁判所構成法による控訴院が、同戦時特例第五条により、上告審として為した判決は、刑訴法第四〇五条第三号にいわゆる判例に当らない。 三 判例違反の主張をするの…