一 衣料品配給規則第五条違反の罪は、衣料品を所定の割当公文書と引換えないで譲渡する罪であるから、その譲渡行為がある毎に犯罪が成立するものといわなければならない。 二 裁判所構成法による控訴院が、同戦時特例第五条により、上告審として為した判決は、刑訴法第四〇五条第三号にいわゆる判例に当らない。 三 判例違反の主張をするのは、その判例を具体的に示すことが必要で、たゞ従来の判例に反するというだけでは足らない。
一 衣料品配給規則第五条違反罪と罪数 二 裁判所構成法による控訴院が同戦時特例第五条による上告審としてなした判決は刑訴第四〇五条第三号にいわゆる「判例」にあたるか 三 従来の判例に反するという主張と上告の適否
昭和22年9月10日商工省令25号衣料品配給規則5条,裁判所構成法戦時特例5条,刑訴法405条3号,刑訴法405条2号,刑訴規則253条
判旨
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)は、取引の日時、物件の品名・数量が同一であり、当事者の共通性等の基本的事実関係に共通性が認められる限り、相手方や代金額に差異があっても失われない。
問題の所在(論点)
起訴状記載の公訴事実と、訴因変更申請書に記載された事実との間に、相手方や代金額等の相違がある場合に、公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)が認められるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)が認められるためには、変更前後の事実がその基本的事実関係において同一であることを要する。
重要事実
被告人は衣料品配給規則違反で起訴された。起訴状記載の事実と、後に申請された訴因変更後の事実を比較すると、①譲渡の相手方、②売渡場所(単複の別)、③代金額に相違があった。一方で、④取引の年月日、⑤取引物件の品名および数量は全く同一であり、売主も同一であった。
事件番号: 昭和27(あ)1120 / 裁判年月日: 昭和28年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自動車揮発油の譲渡先および譲渡場所の変更を伴う訴因変更について、公訴事実の同一性の範囲内にあるとして、その適法性を認めた。 第1 事案の概要:被告人が自動車揮発油を譲渡した事案において、第一審において、当該揮発油の「譲渡先」および「譲渡場所」をそれぞれ変更する訴因変更の手続きが行われた。原判決はこ…
あてはめ
本件では、相手方や代金額等に差異があるものの、刑事手続において重要視される取引の核心部分(日時、品名、数量)が完全に一致している。また、売主が共通し、取引の当事者の一人も共通している。このような事情に照らせば、社会通念上、両事実は基本的事実関係において同一性を失わないものと評価できる。
結論
起訴状と変更後の事実の間には公訴事実の同一性が認められるため、訴因変更を許した第一審の判断は適法である。
実務上の射程
訴因変更の限界(公訴事実の同一性)を判断する際、一部の態様に相違があっても、日時・場所・物・方法といった基本的事実が重なる場合には同一性を肯定する「基本的事実関係の同一性」の判断枠組みとして、実務上参照される。
事件番号: 昭和25(あ)406 / 裁判年月日: 昭和25年10月17日 / 結論: 棄却
本件において第一審判決は適用法令として臨時物資需給調整法第一条、第四条、衣料品配給規則第五条を掲げているが、同規則にいわゆる衣料品とは、その第一条第二項に基いて昭和二二年九月一〇日商工省告示第五八号によつて指定されているのであるから、臨時物資需給調整法の罰則を適用するには、衣料品配給規則第五条のほかに右告示第五八号を掲…
事件番号: 昭和25(あ)1290 / 裁判年月日: 昭和26年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が主張する事実関係が原審によって認められない以上、前提となる統制の撤廃といった事情も認められず、刑訴法411条5号(刑の廃止)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が統制の撤廃された「特綿糸」の取引を主張して上告したが、第一審判決において本件綿糸が特綿糸である事実は認められていなかった。…
事件番号: 昭和25(れ)1507 / 裁判年月日: 昭和25年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律審である最高裁判所に対する上告において、事実認定の不当や量刑の不当を主張することは、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原裁判所の認定した事実および刑の量定を不服として上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):事実誤認および量刑不当を理由とする上告が、法律審におけ…
事件番号: 昭和26(れ)2396 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
一 本件については、旧刑訴事件の上訴審における審判の特例に関する規則八条が適用されるから、控訴審判決が、証拠により罪となるべき事実を認めた理由を説明するには、証拠の標目を掲げれば足りるのである。(同規則の違法、無効でないことは、昭和二四年(れ)第二一二七号同二五年一〇月二五日大法廷判決、集四巻一〇号二一五一頁の趣旨に徴…