判旨
自動車揮発油の譲渡先および譲渡場所の変更を伴う訴因変更について、公訴事実の同一性の範囲内にあるとして、その適法性を認めた。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法312条1項の「公訴事実の同一性」の判断基準。特に、取引犯罪において譲渡先や譲渡場所を大幅に変更する場合に、公訴事実の同一性が維持されるか。
規範
刑訴法312条1項にいう「公訴事実の同一性」とは、基本的事実関係が同一であることを指す。事実の単一性(一罪性)または事実の同一性(非両立性)のいずれかが認められる場合には、訴因の変更が許容される。
重要事実
被告人が自動車揮発油を譲渡した事案において、第一審において、当該揮発油の「譲渡先」および「譲渡場所」をそれぞれ変更する訴因変更の手続きが行われた。原判決はこの訴因変更を適法と判断し、変更後の訴因に基づき有罪を認定した。
あてはめ
本件における自動車揮発油の譲渡という行為の枠組み自体は維持されており、譲渡先や譲渡場所の変更は、犯罪事実の同一性を直ちに否定するものではない。第一審が行った訴因変更は、公訴事実の同一性を害するものではなく、手続き上適法であると解される。
結論
自動車揮発油の譲渡先および譲渡場所を変更する訴因変更は、公訴事実の同一性の範囲内であり適法である。
実務上の射程
本判決は、取引事犯等において日時・場所・相手方等の個別的要素が変更された場合でも、公訴事実の同一性が認められる余地を広く示している。答案上は、公訴事実の同一性を「基本的事実関係の同一性」とする通説的見解を補強する先例として引用できる。
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