判旨
貸金債権の担保として前後二回にわたり個別に代物弁済予約を締結し、それぞれの履行として石油製品を譲り受けた行為は、実質的に二個の譲受行為として評価され、行政規則違反の罪数は併合罪となる。
問題の所在(論点)
同一の相手方から複数回にわたり規制対象物(揮発油)を譲り受けた場合に、その譲受行為を包括して一個の罪とみるべきか、それとも回数に応じた数個の罪(併合罪)とみるべきか、罪数決定の基準が問題となる。
規範
同一の当事者間であっても、原因となる債権が別個であり、かつ、それに基づき別個の合意(代物弁済等)がなされ、その履行として個別に給付が行われた場合には、各行為は独立した構成要件的行為として評価される。したがって、それらによって構成される犯罪(本件では石油製品配給規則違反)は、一個の包括一罪ではなく、数個の罪として併合罪の関係に立つ。
重要事実
被告人は、Aに対し前後二回にわたって金銭を貸し付けた。それぞれの貸金債務を担保するため、各別に代物弁済の契約を締結した。その後、被告人はそれぞれの代物弁済契約の履行として、第一審判決の目録に記載されたとおり、まず(1)ないし(10)の自動車用揮発油を譲り受け、次いで(11)ないし(13)の揮発油を譲り受けた。これらの行為が、当時施行されていた石油製品配給規則12条に違反する無許可の譲受行為として起訴された。
あてはめ
本件において、被告人はAに対し一括して融資を行ったのではなく、前後二回にわたり個別の金融(貸し付け)を行っている。そして、各貸金債務について、それぞれ独立して代物弁済の合意がなされている。この合意の履行として行われた譲受行為は、時間的・原因的に分断されており、最初の(1)ないし(10)の譲受と、その後の(11)ないし(13)の譲受は、それぞれ別個の犯意に基づく独立した行為であると評価できる。したがって、一連の行為を一体的な一個の譲受行為とみることはできず、二個の違反行為が成立すると解される。
結論
被告人の行為には二個の石油製品配給規則12条違反が成立し、併合罪となる。
事件番号: 昭和26(あ)3724 / 裁判年月日: 昭和28年4月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】法人の代表者らが共謀して行った複数の違反行為が併合罪となる場合、両罰規定を適用して法人に科す罰金刑の総額は、個々の罪について定められた罰金額を合算した範囲内で決定することができる。 第1 事案の概要:被告会社の代表取締役A及び専務取締役Bは、会社の業務に関し、正規の割当公文書と引き換えることなく、…
実務上の射程
行政法規違反(無許可営業や無許可譲受など)における罪数判断の射程。基本的には行為の回数や原因関係の独立性に着目して判断するが、本件のように原因となる私法上の契約(貸付と代物弁済)が別個であれば、譲受行為も別個の罪を構成する有力な根拠となる。包括一罪を主張する際の反駁材料として有用である。
事件番号: 昭和27(あ)1120 / 裁判年月日: 昭和28年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自動車揮発油の譲渡先および譲渡場所の変更を伴う訴因変更について、公訴事実の同一性の範囲内にあるとして、その適法性を認めた。 第1 事案の概要:被告人が自動車揮発油を譲渡した事案において、第一審において、当該揮発油の「譲渡先」および「譲渡場所」をそれぞれ変更する訴因変更の手続きが行われた。原判決はこ…
事件番号: 昭和26(あ)1062 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】石油製品配給規則の適用に関し、軽油に該当するものであれば、その品質のいかんを問わず、すべて同規則の適用対象となる。 第1 事案の概要:被告人が行った石油製品の取引について、当該物件が「軽油」に該当するかが争点となった。第一審では、証拠に基づき当該物件が軽油であると認定されたが、被告人側はこれが統制…
事件番号: 昭和27(あ)1720 / 裁判年月日: 昭和28年2月13日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】臨時物資需給調整法の失効を前提とする上告趣意は判例に照らし採用できない。また、公訴事実のうち大赦の対象となった事実については免訴とし、それ以外の軽油・重油の買受事案については行為時法を適用して処断するのが相当である。 第1 事案の概要:被告人両名は、臨時物資需給調整法および石油製品配給規則に違反し…
事件番号: 昭和25(あ)1520 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】肥料配給統制規則等に基づき処罰の対象となる行為は、割当公文書の提示なく硫安を譲渡する現実の行為(引渡し)を指し、その前提となる売買契約そのものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、肥料配給統制規則等の規定に反し、割当公文書の提示を受けることなく、硫安を他者に譲渡した。一審判決はこの譲渡行為を処…