判旨
肥料配給統制規則等に基づき処罰の対象となる行為は、割当公文書の提示なく硫安を譲渡する現実の行為(引渡し)を指し、その前提となる売買契約そのものではない。
問題の所在(論点)
肥料配給統制規則違反における「譲渡」の意義が、売買契約の締結を指すのか、あるいは現実の引渡し行為を指すのかが問題となった。
規範
統制法規が禁止し処罰の対象とする行為は、単なる合意である売買契約ではなく、割当公文書の提示という手続を経ずになされる現実の譲渡行為(物権的変動・引渡し)であると解される。
重要事実
被告人らは、肥料配給統制規則等の規定に反し、割当公文書の提示を受けることなく、硫安を他者に譲渡した。一審判決はこの譲渡行為を処罰の対象としたが、被告人側は売買契約そのものを処罰したものであると主張して上告した。
あてはめ
一審判決が処罰したのは、被告人らが割当公文書の提示なく硫安を「譲渡」したという事実である。これは売買契約という債権的な合意を処罰したものではなく、統制手続を無視して現実の物品移動を伴う譲渡を行った事実を捉えたものといえる。したがって、被告人側の主張は前提を欠いている。
結論
被告人らが割当公文書の提示なく硫安を譲渡した行為は、肥料配給統制規則違反に該当し、売買契約の処罰を主張する上告は棄却される。
実務上の射程
統制法規における「譲渡」の概念を、契約時ではなく現実の引渡し時として捉える判断枠組みとして活用できる。行政刑罰における実行行為の特定に関する基礎的な一事例となる。
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一 衣料品配給規則第五条違反の罪は、衣料品を所定の割当公文書と引換えないで譲渡する罪であるから、その譲渡行為がある毎に犯罪が成立するものといわなければならない。 二 裁判所構成法による控訴院が、同戦時特例第五条により、上告審として為した判決は、刑訴法第四〇五条第三号にいわゆる判例に当らない。 三 判例違反の主張をするの…
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