判旨
指定生産資材割当規則と指定繊維資材配給規則は、後者が前者を補完する関係にあり、一方の適用が他方を排除するものではない。また、需要者の地位にある者が割当証明書と引換えずに資材を売買した場合は、割当規則違反が成立する。
問題の所在(論点)
指定繊維資材配給規則の制定により、指定生産資材割当規則の適用が排除されるか。また、製造業者である被告人に、販売業者を対象とする規制を適用すべきか(罪刑法定主義ないし擬律錯誤の成否)。
規範
指定繊維資材配給規則は指定生産資材割当規則を補完するものであり、両者は排他的な関係にない。また、資材の取引規制については、当該行為主体が「需要者」と「販売業者」のいずれの属性を有しているかにより、適用されるべき法条が決定される。
重要事実
被告人は絹織物等の製造業者であり、指定生産資材である生糸等の需要者であった。被告人は、需要者割当証明書と引換えることなく、生糸を買い受け、また絹人絹交織ビロード生地を売渡した。弁護人は、指定繊維資材配給規則の適用により割当規則が排除されるべきである、または被告人を販売業者として扱うべきである旨を主張して上告した。
あてはめ
指定繊維資材配給規則1条2項は「規定を排除し又はこれに代るものでない」と明記しており、割当規則の適用は維持される。また、事実認定によれば被告人は「製造業者」かつ「需要者」であり、販売業者ではない。したがって、販売業者を対象とする配給規則2条ではなく、需要者を対象とする割当規則7条および9条を適用した原審の判断は正当である。証拠に照らし、証明書なしの売買事実に経験則違反はない。
結論
被告人を指定生産資材割当規則違反の罪に問うた原判決に擬律錯誤の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和24(れ)2750 / 裁判年月日: 昭和25年4月14日 / 結論: 棄却
臨時物資需給調整法に基いて發せられた昭和二二年一月閣令商工、農林、大藏、内務、文部、厚生、運輸、遞信、司法省令第一號、指定生産資材割當規則第一一條は指定生産資材の取引が物價の統制に關する法令に違反したときは、その取引が他面指定生産資材割當規則の規定に違反しても、物價の統制に關する法令のみを適用し臨時物資需給調整法の罰則…
特別法間の関係が補完的である場合の適用関係、および主体属性による罰則の切り分けを論じる際の参考となる。特に、行政規制が重層的になされている場合でも、明文の補完規定があれば両方の適用を検討すべきであることを示唆している。
事件番号: 昭和25(あ)1520 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】肥料配給統制規則等に基づき処罰の対象となる行為は、割当公文書の提示なく硫安を譲渡する現実の行為(引渡し)を指し、その前提となる売買契約そのものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、肥料配給統制規則等の規定に反し、割当公文書の提示を受けることなく、硫安を他者に譲渡した。一審判決はこの譲渡行為を処…
事件番号: 昭和26(あ)511 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧物価統制令等における「営業」の意義に関し、営利の目的をもって有償的譲渡(販売)を反復継続する意思で行う場合には、仕入行為が反復されることは要件とならない。 第1 事案の概要:被告人が、営利の目的をもって有償的譲渡(販売行為)を反復して行った事案。弁護人は、販売行為のみならず仕入行為も反復してなさ…
事件番号: 昭和25(あ)723 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
一 衣料品配給規則第五条違反の罪は、衣料品を所定の割当公文書と引換えないで譲渡する罪であるから、その譲渡行為がある毎に犯罪が成立するものといわなければならない。 二 裁判所構成法による控訴院が、同戦時特例第五条により、上告審として為した判決は、刑訴法第四〇五条第三号にいわゆる判例に当らない。 三 判例違反の主張をするの…
事件番号: 昭和25(あ)406 / 裁判年月日: 昭和25年10月17日 / 結論: 棄却
本件において第一審判決は適用法令として臨時物資需給調整法第一条、第四条、衣料品配給規則第五条を掲げているが、同規則にいわゆる衣料品とは、その第一条第二項に基いて昭和二二年九月一〇日商工省告示第五八号によつて指定されているのであるから、臨時物資需給調整法の罰則を適用するには、衣料品配給規則第五条のほかに右告示第五八号を掲…