判旨
法人の代表者らが共謀して行った複数の違反行為が併合罪となる場合、両罰規定を適用して法人に科す罰金刑の総額は、個々の罪について定められた罰金額を合算した範囲内で決定することができる。
問題の所在(論点)
両罰規定(臨時物資需給調整法6条)により法人を処罰する場合において、法人の従業員等による複数の違反行為が併合罪(刑法45条前段)となるとき、法人に科す罰金刑の上限は一つの罪の法定刑の上限に拘束されるか、それとも各罪の罰金を合算(刑法48条2項)できるか。
規範
法人の代表者等が、法人の業務に関し、刑法45条前段の併合罪に該当する複数の違反行為を行った場合、当該法人に対して科すべき罰金刑は、同法48条2項に従い、各罪について定められた罰金の多額の合計額以下において算出される。
重要事実
被告会社の代表取締役A及び専務取締役Bは、会社の業務に関し、正規の割当公文書と引き換えることなく、石油製品である重油等を計18回にわたり買い受け、また8回にわたり売り渡した。第一審判決は、これらの多数の違反行為が刑法45条前段の併合罪に該当すると判断し、同法48条2項を適用して、各罪の罰金を合算した額の範囲内である20万円の罰金を被告会社に言い渡した。これに対し弁護側は、臨時物資需給調整法4条が定める法定刑の上限(10万円)を超える罰金を科すことは違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件における多数の違反行為は、いずれも臨時物資需給調整法に違反する独立した犯罪構成要件を充足するものであり、刑法45条前段の併合罪に該当する。両罰規定は、従業員等の違反行為を前提に法人にも刑を科すものであるから、個々の違反行為に対応する刑を法人に対しても算出するのが相当である。したがって、刑法48条2項に基づき、各罪につき定められた罰金の合算額以下において罰金刑を量定した第一審の判断に、「法律の認めた額を超えた罰金」を言い渡した違法は認められない。
結論
法人の業務に関して複数の併合罪となる違反行為があった場合、刑法48条2項に基づき各罪の罰金額を合算して処断することができる。
事件番号: 昭和27(あ)4685 / 裁判年月日: 昭和28年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金債権の担保として前後二回にわたり個別に代物弁済予約を締結し、それぞれの履行として石油製品を譲り受けた行為は、実質的に二個の譲受行為として評価され、行政規則違反の罪数は併合罪となる。 第1 事案の概要:被告人は、Aに対し前後二回にわたって金銭を貸し付けた。それぞれの貸金債務を担保するため、各別に…
実務上の射程
法人の刑事責任における罰金刑の算定に関する重要判例である。答案上は、両罰規定の法的性質(過失責任説等)に触れつつ、数個の違反行為がある場合には自然人と同様に併合罪(刑法45条、48条)の処理がなされることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)3083 / 裁判年月日: 昭和27年1月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の罪が併合罪の関係にある場合、懲役刑の併合罪加重については、最も重い罪の懲役刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする刑法47条の規定に従う。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資需給調整法違反を含む複数の罪を犯し、第一審において併合罪として処断された。第一審判決は、刑法45条前段に基づき、…
事件番号: 昭和27(あ)5894 / 裁判年月日: 昭和28年5月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】数罪が刑法45条前段の併合罪の関係にある場合において、その一部の罪について大赦があったときは、当該部分について免訴を言い渡し、残余の罪について刑を量定すべきである。 第1 事案の概要:被告人会社及びその代表者Cらは、潤滑油等の譲渡・譲受に関し、臨時物資需給調整法違反の罪に問われた。第一審判決は、複…
事件番号: 昭和27(あ)1528 / 裁判年月日: 昭和27年11月13日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】数個の罪が併合罪の関係にある場合において、その一部の罪についてのみ大赦があったときは、大赦の対象となった罪について免訴を言い渡し、残余の罪について刑を科すべきである。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告会社は、臨時物資需給調整法および石油製品配給規則に違反する複数の罪(別紙一覧表記載の1〜42の…
事件番号: 昭和27(あ)1120 / 裁判年月日: 昭和28年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自動車揮発油の譲渡先および譲渡場所の変更を伴う訴因変更について、公訴事実の同一性の範囲内にあるとして、その適法性を認めた。 第1 事案の概要:被告人が自動車揮発油を譲渡した事案において、第一審において、当該揮発油の「譲渡先」および「譲渡場所」をそれぞれ変更する訴因変更の手続きが行われた。原判決はこ…