原判決が、上記食糧管理法第三一條の法定刑と物價統制令第三三條の法定刑を對照するに當り、刑法施行法第三條の適用を明示しなかつた瑕疵はあるが、結局併科刑又は選擇刑の輕い刑種の罰金を度外視し、これを不問に附して重い刑種の懲役のみを對照比較し、その長期も短期も同じであるから刑法第一〇條第三項を適用し自由裁量によつて犯情により食糧管理法違反罪の法定刑に從い處斷したのは、固より適法である。
併科刑又は選擇刑の定める場合における法定刑の對照
刑法10条,食糧管理法31条,刑法施行法3条3項,物価統制令33条
判旨
刑法54条1項前段の「最も重き刑」を決定するにあたり、併科刑又は選択刑が含まれる場合には、その中で最も重い刑種(主刑)のみを比較対照すべきであり、それが同種同量であるときは刑法10条3項に基づき犯情により決定する。
問題の所在(論点)
一個の行為が数個の罪名に触れる場合(想像的競合)において、刑法54条1項前段に基づき比較すべき「最も重き刑」をいかに決定すべきか。特に、選択刑や併科刑が含まれる場合、全対的に比較すべきか、あるいは重い刑種のみを重点的に比較すべきか。
規範
刑法54条1項前段の「最も重き刑」とは、抽象的な法定刑の軽重を指す。併科刑又は選択刑の場合、刑法施行法3条3項に基づき、その中の「重き刑のみ」を対照すべきである(重点的対照主義)。重き刑種が同種同量である場合には、刑法10条3項を適用し、犯情(裁判所の自由裁量)によって刑の軽重を決定する。
重要事実
被告人は、食糧管理法違反と物価統制令違反の想像的競合にあたる行為を行った。食糧管理法の法定刑は「10年以下の懲役又は5万円以下の罰金」、物価統制令の法定刑は「10年以下の懲役又は10万円以下の罰金」であった。原審は、懲役刑の長期・短期が同一であることから、犯情により食糧管理法の刑の方が重いとして、同法を適用して処断した。これに対し弁護人は、罰金の多額に差がある以上、全対的対照主義に基づき物価統制令の刑を重いとすべきであると主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)1826 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
本件において、第一審判決は被告人を懲役三年及び罰金三〇万円(罰金不完納の場合における労役場留置期間の言渡を遺脱)に処したのに対し、原控訴審判決は被告人を懲役三年但し五年間刑の執行猶予及び罰金四〇万円(前金不完納の場合に金一、〇〇〇円を一日に換算した期間労役場留置)に処したのであるから、原控訴審判決は少しも前記大審院判決…
あてはめ
刑法10条は単独刑の軽重を定めているが、併科・選択刑の対照方法は明記していない。しかし、刑法施行法3条3項は「二個以上の主刑を併科すべきとき、又は二個以上の主刑中其一個を科すべきときは、其の中で重き刑のみに付き対照を為すべき」と規定している。同条は新旧法の比較のみならず、刑法54条の運用においても一般的に適用されるべき基準である。本件では、両罪とも最も重い刑種は「懲役」であり、その長期・短期は同一である。したがって、軽い方の刑種である罰金額の多額を比較する必要はなく、刑法10条3項に基づき、裁判所が犯情を考慮して食糧管理法の刑を重いと判断したことは適法である。
結論
併科刑や選択刑の軽重比較は、重い方の刑種のみを基準とする。重い刑種が同等の場合は、裁判所の裁量により処断すべき法条を決定できる。原判決に違法はなく、上告棄却。
実務上の射程
想像的競合における処断刑の決定プロセスを示す。実務上、罰金刑の有無や多寡に関わらず、懲役刑等の重い刑種が基準となる。司法試験では罪数論(54条1項)の問題として、重い方の罪で処断することを述べる際の理論的根拠(重点的対照主義)として活用する。
事件番号: 昭和27(あ)1108 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反(ヤミ物資の譲渡)と物価統制令違反(超過価格での売買)が、同一の譲渡行為により発生した場合には、刑法54条1項前段の観念的競合として処理される。複数の取引がなされた場合は、これらを併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、(1)粳…
事件番号: 昭和26(れ)238 / 裁判年月日: 昭和26年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項(現行の刑事訴訟法405条等に相当する制限)に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、原判決の量刑が重すぎることを理由として上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):量刑不当のみを理由とする上告が…
事件番号: 昭和25(れ)1582 / 裁判年月日: 昭和26年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が一審・二審の判決に対し、刑の重すぎることを不服として上告を申し立てた事案。弁護人は、量刑の不当を主たる上告趣意として主張した。 第2 問題の所在(論点):量刑不当の主張が、最高…
事件番号: 昭和26(れ)1174 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、上告適法の理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪の量刑が重すぎるとして、弁護人が上告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):量刑不当の主張が、法的に適法な上告理由として認められるか。 第3 規範:上告審において量…