判旨
食糧管理法違反(ヤミ物資の譲渡)と物価統制令違反(超過価格での売買)が、同一の譲渡行為により発生した場合には、刑法54条1項前段の観念的競合として処理される。複数の取引がなされた場合は、これらを併合罪として処断すべきである。
問題の所在(論点)
一個の売買行為の中で、「無許可での譲渡(食糧管理法違反)」と「超過価格での譲売(物価統制令違反)」が同時に行われた場合、それらの罪数関係をいかに解すべきか。また、複数の異なる物資の取引についてはいかに扱うべきか。
規範
一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合、刑法54条1項前段により「観念的競合」として、その最も重い刑により処断する。また、時間的・場所的に別個の行為としてなされた複数の犯罪事実は、刑法45条前段により「併合罪」として処断する。
重要事実
被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、(1)粳精米および糯精米を政府又は食糧配給公団以外の者に譲渡した(食糧管理法違反)とともに、当該譲渡を統制額を超過した価格で行った(物価統制令違反)。さらに、被告人は(2)大豆および分密中双についても、同様に政府等以外の者に対し、統制額を超過した価格で売却した。
あてはめ
被告人が精米を政府等以外の者に売渡した行為において、その譲渡自体が食糧管理法に抵触し、かつその売渡価格が物価統制令の制限を超えている場合、これらは同一の売渡行為の異なる側面を捉えたものである。したがって、「一個の行為で二個の罪名に触れる場合」に該当し、観念的競合となる。本件では、精米の譲渡に関する各罪について観念的競合を認め、最も重い物価統制令違反の刑に従って処断する。他方、大豆や分密中双の取引については、精米の取引とは別個の事由に基づくものであるから、これら複数の罪の間には併合罪の規定を適用し、合算した罰金刑の範囲内で刑を科すべきである。
結論
政府等以外の者に対するヤミ物資の超過価格売渡は、食糧管理法違反と物価統制令違反の観念的競合となる。複数の売渡事実が存在する場合には、それらを併合罪として処罰する。
事件番号: 昭和25(あ)2975 / 裁判年月日: 昭和27年10月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反と物価統制令違反が一所為数法の関係にある場合、一方が犯罪の証明が不十分であっても、他方の事実で有罪を宣告する以上、主文で個別に無罪を言い渡す必要はない。 第1 事案の概要:農業を営む被告人が、法定の除外事由がないにもかかわらず、昭和23年10月下旬に青年会支部長を介して会員らから未検…
実務上の射程
一個の譲渡行為が複数の取締法規に抵触する場合の罪数処理を示す典型例である。答案上では、行為の同一性を認定した上で、刑法54条1項前段の規範を適用する際の論拠として活用できる。本判決は、大赦による免訴判決を含むが、罪数判断の論理自体は現在の実務でも維持されている。
事件番号: 昭和23(れ)863 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
一 甲が米の闇売をするにあたり甲の依頼により、法定の除外事由がないのにその米を運搬し甲に変り統制額を超えた代金でその米を売渡し買主からその代金を受取つてこれを甲に手渡し、甲の行為を幇助した者の主食不法運搬行為と、超過価格契約受領幇助行為とは一個の行為で二個の罪名に触れる。 二 原判決は判示二八日正午頃判示a川岸の船中で…
事件番号: 昭和26(あ)4765 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】共犯者のうち一人が営利目的を有し、又は自己の業務に関している場合には、他の共犯者がそれらの主観的要件や地位を有しないときであっても、価格等統制令違反の責を免れない。 第1 事案の概要:被告人は、精米を統制額を超える代金で販売する目的で所持し、実際に販売したとして、食糧管理法違反および物価統制令違反…
事件番号: 昭和26(あ)1928 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合、裁判所は当該部分について免訴の言渡しをしなければならず、残余の事実が有罪であるときは、原判決を破棄した上で一部免訴とし、残部を処罰すべきである。 第1 事案の概要:被告人は小豆および糯精米(もちせいまい)を不法に買い受けたとして、食糧管理法違反および物価統制…
事件番号: 昭和26(あ)3020 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法に基づく許可なく生産者から米麦を買い受ける行為は、同法9条・31条等の規定に違反し、処罰の対象となる。また、判決確定前に大赦が行われた公訴事実については、刑事訴訟法に基づき免訴の言渡しをすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和23年6月頃から昭和25年1月初旬までの間、自宅等にお…