一 甲が米の闇売をするにあたり甲の依頼により、法定の除外事由がないのにその米を運搬し甲に変り統制額を超えた代金でその米を売渡し買主からその代金を受取つてこれを甲に手渡し、甲の行為を幇助した者の主食不法運搬行為と、超過価格契約受領幇助行為とは一個の行為で二個の罪名に触れる。 二 原判決は判示二八日正午頃判示a川岸の船中で判示「A」に代りBとの間に判示玄米一五俵売買の交渉をし、これを統制額を超過した代金でBを通じて法定の買受資格のない判示Cに売渡し、翌月前記の船中で右代金を受取つて「A」に手渡し以て右「A」の犯行を容易ならしめて幇助したものである旨判示しただけで、右「A」が右犯行当時の食糧管理法施行規則第二二条の三所定の「米麦の所有者」であることを何等判示していない。されば原判決が右判示所為に対し物価統制令第三三条、第三条、第四条、昭和二一年物価庁告示第一五一号刑法第六二条第一項、第六三条、第六八条等のみを適用して、食糧管理法第三一条、第九条、同法施行令第一〇条同法施行規則第二二条の三の適用しなかつのは正当である。所論は、原判決における「法定の買受資格のない」という無意味な記載を捉えて、原判決の認定しない自己に不利益な犯罪のあることを前提として、原判決は適用すべき法律を適用しなかつた違法があると主張するものであるから採ることはできない。
一 主食の不法運搬行為とその主食の統制額超過契約代金受領幇助行為が想像的競合となる事例 二 原判決の認定しない自己に不利益な事実があることを前提とし適用法令の遺脱を主張する上告の適否
刑法54条1項,物価統制令3条,食糧管理法9条(昭和22年12月法律124号による改正前のもの),食糧管理法施行令11条ノ5(昭和22年5月1日勅令191条による改正のもの),食糧管理法施行規則23条ノ7(昭和22年10月1日農林省令55号により改正のもの),刑訴法405条,食糧管理施行規則22条の3
判旨
単一の意思決定に基づき行われた、米の運搬行為と超過価格による売買の幇助行為は、一連の実行行為として一個の行為が二個の罪名に触れるもの(観念的競合)と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
単一の決意に基づき行われた「米の運搬行為」と、その後の「超過価格による売買の幇助行為」が、刑法54条1項前段にいう「一個の行為」にあたるか。
規範
単一の犯意に基づき、場所的・時間的に連続して行われた一連の実行行為が、複数の構成要件に該当する場合には、刑法54条1項前段により観念的競合(一個の行為にして二個の罪名に触れるもの)として処理すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)1108 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反(ヤミ物資の譲渡)と物価統制令違反(超過価格での売買)が、同一の譲渡行為により発生した場合には、刑法54条1項前段の観念的競合として処理される。複数の取引がなされた場合は、これらを併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、(1)粳…
重要事実
被告人は、Aからの申し出に応じ、米を特定の場所まで運搬した上で、闇値で転売して利益を得ようと決意した。これに基づき、被告人は5月28日に米をc湖岸からb町川岸まで運搬し、同所にてAに代わりBと交渉して、物価統制令に違反する超過価格でCに売り渡した。翌日、被告人はその代金を受け取ってAに手渡し、Aの犯行を容易ならしめて幇助した。
あてはめ
被告人は、あらかじめ米を運搬して闇値で売却し利益を得るという「単一の意思決定」に基づき行動している。この意思決定の下で、米を運搬し、引き続きその米の売買交渉及び代金受領という幇助行為に及んでおり、これらの一連の実行行為は、時間的・場所的にも密接に関連している。したがって、法的には「一個の行為」として評価されるべきである。
結論
本件運搬行為と超過価格契約受領幇助行為は、一個の行為にして二個の罪名に触れるもの(観念的競合)とした原判決の判断は正当である。
実務上の射程
数個の行為が外形的に存在する場合であっても、犯意の単一性と実行行為の連続性・密接性により「一個の行為」と評価される典型例。罪数論における観念的競合の認定において、動機の共通性や一連の流れを重視する際の根拠となり得る。
事件番号: 昭和25(あ)2975 / 裁判年月日: 昭和27年10月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反と物価統制令違反が一所為数法の関係にある場合、一方が犯罪の証明が不十分であっても、他方の事実で有罪を宣告する以上、主文で個別に無罪を言い渡す必要はない。 第1 事案の概要:農業を営む被告人が、法定の除外事由がないにもかかわらず、昭和23年10月下旬に青年会支部長を介して会員らから未検…
事件番号: 昭和25(あ)2996 / 裁判年月日: 昭和26年12月13日 / 結論: 棄却
第一審判決は、正犯の公訴事実に対し幇助として事実認定をすると共に、さらに正犯について無罪である旨を理由中において説示しているのは、所論のように「無罪と判断した公訴事実に対して重ねて有罪を認定している」のではなく、公訴事実そのまゝの正犯は成立しないが幇助罪は成立するという趣旨を言い現わしたものに過ぎない。従つて、本件にお…
事件番号: 昭和29(あ)2607 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の譲渡事実であっても、それらを一個の犯罪行為として認めることができる場合には、包括一罪として訴因を特定することが可能である。 第1 事案の概要:被告人は、特定の物品につき複数回にわたる譲渡行為を行った。検察官は、これら数個の譲渡事実を個別の犯罪としてではなく、一括して一個の犯罪行為として起訴し…
事件番号: 昭和26(あ)4765 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】共犯者のうち一人が営利目的を有し、又は自己の業務に関している場合には、他の共犯者がそれらの主観的要件や地位を有しないときであっても、価格等統制令違反の責を免れない。 第1 事案の概要:被告人は、精米を統制額を超える代金で販売する目的で所持し、実際に販売したとして、食糧管理法違反および物価統制令違反…