判旨
共犯者のうち一人が営利目的を有し、又は自己の業務に関している場合には、他の共犯者がそれらの主観的要件や地位を有しないときであっても、価格等統制令違反の責を免れない。
問題の所在(論点)
物価統制令等における「営利の目的」や「業務」といった身分的・目的的な要素が欠落している共犯者について、当該要素を有する他の共犯者との共同正犯が成立し、有罪とすることができるか。
規範
共犯者の一人が営利を目的とせず、または自己の業務に関しない場合であっても、他の共犯者が営利の目的を有し、またはその業務に関するものであるときは、共同正犯の理により、全ての共犯者が価格等統制令(現在の物価統制令等に相当する法理)違反の罪責を負う。
重要事実
被告人は、精米を統制額を超える代金で販売する目的で所持し、実際に販売したとして、食糧管理法違反および物価統制令違反の罪で起訴された。弁護人は、被告人自身に営利目的が認められない等の主張を行い、憲法違反や判例違反を理由に上告した。なお、上告審の審理中に、公訴事実の一部について大赦令による大赦が実施された。
あてはめ
最高裁は、大審院判例を引用しつつ、共犯者の一部に営利目的や業務性が認められれば、他の共犯者にも同様の罪責が及ぶことを確認した。本件では、被告人に営利目的がないとの主張がなされたが、共犯者の法理に照らせば、他の共犯者に目的がある以上、被告人の主観の有無に関わらず物価統制令違反が成立すると解した。ただし、一部の事実については、昭和27年政令第117号大赦令の適用対象となったため、当該部分については免訴すべきとした。
結論
被告人に営利目的や業務性が直接認められない場合であっても、それらを有する者と共謀して実行した以上、共同正犯として処断される。ただし、大赦があった事実については免訴を言い渡す。
事件番号: 昭和25(あ)2975 / 裁判年月日: 昭和27年10月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反と物価統制令違反が一所為数法の関係にある場合、一方が犯罪の証明が不十分であっても、他方の事実で有罪を宣告する以上、主文で個別に無罪を言い渡す必要はない。 第1 事案の概要:農業を営む被告人が、法定の除外事由がないにもかかわらず、昭和23年10月下旬に青年会支部長を介して会員らから未検…
実務上の射程
刑法65条の適用場面、特に目的犯や身分犯における共犯の成否を論じる際の論拠として利用できる。判旨は価格等統制令を前提とするが、現在の特別刑法における目的犯の共同正犯一般に射程が及ぶ判例として位置付けられる。
事件番号: 昭和27(あ)1108 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反(ヤミ物資の譲渡)と物価統制令違反(超過価格での売買)が、同一の譲渡行為により発生した場合には、刑法54条1項前段の観念的競合として処理される。複数の取引がなされた場合は、これらを併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、(1)粳…
事件番号: 昭和26(れ)1766 / 裁判年月日: 昭和26年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】価格等の統制額を超えて契約した等の場合に成立する価格違反の罪において、販売価格が具体的に表示され、その価格が告示の統制額を超えていることが明らかであれば、犯罪事実の説明として十分である。また、告示の規格に該当しない物品であっても「その他の」という包括的区分に該当し得る。 第1 事案の概要:被告人は…
事件番号: 昭和29(あ)2607 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の譲渡事実であっても、それらを一個の犯罪行為として認めることができる場合には、包括一罪として訴因を特定することが可能である。 第1 事案の概要:被告人は、特定の物品につき複数回にわたる譲渡行為を行った。検察官は、これら数個の譲渡事実を個別の犯罪としてではなく、一括して一個の犯罪行為として起訴し…
事件番号: 昭和25(あ)2325 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】多数の同種犯罪者が起訴・処罰されていない状況で、特定の被告人のみが起訴されたとしても、それが個別の犯情等に基づく妥当な措置である限り、憲法14条の平等原則に違反しない。また、食糧管理法による規制は国民の生活安定を目的とするものであり、憲法25条の生存権を否定するものではない。 第1 事案の概要:被…