判旨
食糧管理法違反と物価統制令違反が一所為数法の関係にある場合、一方が犯罪の証明が不十分であっても、他方の事実で有罪を宣告する以上、主文で個別に無罪を言い渡す必要はない。
問題の所在(論点)
一つの行為が複数の罪名に触れるとして起訴された(観念的競合)場合において、一部の罪名については犯罪の証明が不十分であるとき、裁判所は主文でその点について無罪を言い渡すべきか。
規範
起訴された複数の事実が観念的競合(いわゆる一所為数法)の関係にある場合、その一部の事実について犯罪の証明が不十分であっても、他の事実によって有罪を宣告する限り、主文において個別に無罪の言渡しをする必要はない。
重要事実
農業を営む被告人が、法定の除外事由がないにもかかわらず、昭和23年10月下旬に青年会支部長を介して会員らから未検査水粳玄米4俵を代金2万4000円で買い受けた。この行為が食糧管理法違反および物価統制令違反として起訴された事案である。
あてはめ
被告人の行為は、食糧管理法9条、31条および同法施行令6条に該当し、有罪と認められる。一方で、物価統制令違反の点については犯罪の証明が不十分であるが、この事実は食糧管理法違反の事実と「一所為数法」の関係にあるものとして起訴されている。したがって、食糧管理法違反について有罪を宣告する以上、物価統制令違反について重ねて無罪を言い渡す必要はないと判断される。
結論
被告人を食糧管理法違反により懲役6月(執行猶予3年)に処する。物価統制令違反の点については、主文で無罪の言渡しをしない。
実務上の射程
科刑上一罪の関係にある数個の訴因のうち、一部が認められず他が認められる場合、主文で「一部無罪」を掲げず、理由中で判断を示せば足りるという実務上の運用を支える判例である。
事件番号: 昭和27(あ)1108 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反(ヤミ物資の譲渡)と物価統制令違反(超過価格での売買)が、同一の譲渡行為により発生した場合には、刑法54条1項前段の観念的競合として処理される。複数の取引がなされた場合は、これらを併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、(1)粳…
事件番号: 昭和26(あ)4765 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】共犯者のうち一人が営利目的を有し、又は自己の業務に関している場合には、他の共犯者がそれらの主観的要件や地位を有しないときであっても、価格等統制令違反の責を免れない。 第1 事案の概要:被告人は、精米を統制額を超える代金で販売する目的で所持し、実際に販売したとして、食糧管理法違反および物価統制令違反…
事件番号: 昭和25(あ)2996 / 裁判年月日: 昭和26年12月13日 / 結論: 棄却
第一審判決は、正犯の公訴事実に対し幇助として事実認定をすると共に、さらに正犯について無罪である旨を理由中において説示しているのは、所論のように「無罪と判断した公訴事実に対して重ねて有罪を認定している」のではなく、公訴事実そのまゝの正犯は成立しないが幇助罪は成立するという趣旨を言い現わしたものに過ぎない。従つて、本件にお…
事件番号: 昭和29(あ)2607 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の譲渡事実であっても、それらを一個の犯罪行為として認めることができる場合には、包括一罪として訴因を特定することが可能である。 第1 事案の概要:被告人は、特定の物品につき複数回にわたる譲渡行為を行った。検察官は、これら数個の譲渡事実を個別の犯罪としてではなく、一括して一個の犯罪行為として起訴し…