判旨
食糧管理法違反において、統制額超過買受罪と不法所持罪は別個に成立し、不法所持罪が当然に買受罪に吸収されたり、不可罰的事後行為となったりすることはない。また、不法所持罪と販売罪についても、対象物が異なる場合には吸収関係は認められない。
問題の所在(論点)
1.先行する統制額超過買受罪と、その後の目的物所持(不法所持罪)との間に吸収関係や不可罰的事後行為の関係が認められるか。2.目的物を異にする不法所持罪と超過販売罪との間に吸収関係が認められるか。
規範
先行する買受罪の違法状態が所持により当然に継続するものではなく、また買受が必然的に販売を伴うものでもない。そのため、先行行為に包摂しきれない新たな法益侵害が認められる場合には、別罪が成立する。一方、不法所持罪と販売罪の関係については、同一の目的物について販売罪が成立した際、それに付随する所持行為が吸収される余地があるが、対象物が異なる場合には各別に成立する。
重要事実
被告人は、以前に食糧管理法違反で略式命令を受けていたが、その約4か月後から再び同種の犯行(未検査玄米・白米の統制額超過販売)を開始した。さらに被告人は、これらとは別に、統制額超過で販売する目的をもって未検査小麦を不法に所持していた。弁護人は、小麦の不法所持は先行する買受行為に吸収されるか、あるいは買受の事後状態に過ぎないと主張した。また、玄米等の超過販売罪との関係についても吸収を主張し、上告した。
あてはめ
まず、買受罪は売買行為の終了により完結し、その後の所持によって買受の違法状態が継続する性質のものではないため、不法所持を単なる事後状態(不可罰的事後行為)ということはできない。次に、販売目的の不法所持罪と販売罪の関係について、仮に同一物であれば吸収の余地もあるが、本件の超過販売罪は「玄米・白米」に関するものであり、不法所持罪は「小麦」に関するものである。対象となる目的物が明確に異なり、かつ小麦の所持は未だ販売段階に至っていない以上、両罪が吸収関係に立つ理由はない。
結論
本件の不法所持罪は、先行する買受罪に吸収されず、また別個の目的物に関する超過販売罪とも吸収関係にない。したがって、各罪の併合罪とする原判決の判断は正当である。
事件番号: 昭和27(あ)3137 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
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実務上の射程
罪数論における「不可罰的事後行為」や「包含関係(吸収)」の限界を示す。先行行為(買受)によって後続行為(所持)の違法性が評価し尽くされていない場合や、対象物が異なる場合には、安易に一罪とせず別罪の成立を認めるべきとする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(あ)2975 / 裁判年月日: 昭和27年10月14日 / 結論: その他
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事件番号: 昭和27(あ)1108 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: その他
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事件番号: 昭和26(あ)4765 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】共犯者のうち一人が営利目的を有し、又は自己の業務に関している場合には、他の共犯者がそれらの主観的要件や地位を有しないときであっても、価格等統制令違反の責を免れない。 第1 事案の概要:被告人は、精米を統制額を超える代金で販売する目的で所持し、実際に販売したとして、食糧管理法違反および物価統制令違反…