食糧緊急措置令の収用と憲法三五条の押収とは全く無関係のものであるこという迄もない。論旨第一点の如きは全く違憲に名を藉るものと見ざるを得ない。
憲法第三五条の「押収」と食糧緊急措置令にいう「収用」との関係
憲法35条,食糧緊急措置令13条
判旨
食糧緊急措置令に基づく収用は、憲法35条が定める刑事手続上の「押収」には当たらない。したがって、同令による収用手続において、憲法35条の令状主義を適用する必要はない。
問題の所在(論点)
食糧緊急措置令に基づく行政上の「収用」が、憲法35条に規定する「押収」に該当し、同条の令状主義の適用を受けるか。
規範
憲法35条が規定する「押収」とは、刑事司法手続において証拠物または没収すべき物を強制的に取得する処分を指す。これに対し、行政上の目的を達成するために行われる「収用」は、刑事手続の一環として行われるものではないため、同条の直接の適用対象外である。
重要事実
被告人は食糧緊急措置令違反で起訴されたが、弁護人は同令に基づく食糧の「収用」が、憲法35条に規定された「押収」に該当し、令状が必要であるにもかかわらずこれを得ていない点において憲法違反であると主張し、上告した。
あてはめ
食糧緊急措置令に基づく収用は、食糧配給の適正化という行政目的を達成するための処分であり、犯罪の捜査や証拠の確保を目的とする刑事手続上の処分ではない。したがって、性質上、憲法35条が予定する刑事上の強制処分である「押収」とは全く無関係のものと言える。
結論
食糧緊急措置令による収用は憲法35条の押収に当たらず、同条の令状主義に違反しない。
実務上の射程
行政上の強制処分と憲法35条の適用関係に関する初期の判断である。行政目的の調査や処分であっても、実質的に刑事責任追及を目的とする場合には同条が準用される余地があるとした後の川崎民商事件判決等と比較して、本判決はその射程を純然たる行政上の収用に限定している。
事件番号: 昭和25(あ)2958 / 裁判年月日: 昭和26年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、被告人および弁護人の上告趣意が刑事訴訟法405条の上告理由に当たらず、同法411条を適用すべき顕著な事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人は刑事事件の判決に対し上告を提起したが、上告理由として主張された内容は刑事訴訟法405条に掲げられた事由(憲法違…