判旨
食糧管理法による食糧の強制買上げ制や配給制等の規制は、公共の福祉のために必要かつ合理的な制限であり、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
食糧管理法による食糧の売買や流通の規制が、憲法29条が保障する財産権を不当に侵害し、違憲とならないか。
規範
財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律で定めるものとされる(憲法29条2項)。国民の食生活を安定させるという重要な公共の利益のために、必要かつ合理的な範囲内でなされる私有財産の利用や処分の制限は、同条の許容する範囲内であり、違憲とはならない。
重要事実
被告人らが食糧管理法の規定に違反する行為(具体的な違反行為の詳細は判決文からは不明)を行い、起訴された事案。弁護人は、同法9条が定める食糧の統制措置が、国民の財産権を保障する憲法29条に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
本判決は詳細な理由を説示せず、先行する大法廷判例(昭和25年11月15日判決)を引用する。同判例の趣旨に照らせば、戦後の食糧不足下において、国民の生存権を保障し経済の安定を図るため、主要食糧の流通を国が管理することは「公共の福祉」に基づく合理的な制限と評価される。したがって、同法9条の規制は財産権の濫用を防止し、公共の利益を優先させるものとして正当化される。
結論
食糧管理法9条は憲法29条に違反しない。したがって、被告人らの上告は棄却される。
実務上の射程
財産権の制限が「公共の福祉」によるものとして合憲性と判断される際の初期の基準を示す。現代の答案作成においては、経済的自由(財産権)に対する規制の合憲性判定枠組み(目的・手段審査)を論じる際の歴史的背景や、生存権的配慮に基づく規制の合理性を肯定する際の根拠として参照し得る。
事件番号: 昭和25(あ)19 / 裁判年月日: 昭和25年11月22日 / 結論: 棄却
主要食糧の移動を制限又は禁止することを認めた食糧管理法第九条の規定は、公共の福祉を維持するために設けられたもので憲法第二九条に反しない。