主要食糧の移動を制限又は禁止することを認めた食糧管理法第九条の規定は、公共の福祉を維持するために設けられたもので憲法第二九条に反しない。
食糧管理法第九条の合憲性(第二九条)
憲法29条,食糧管理法9条
判旨
主要食糧の移動制限を定めた食糧管理法9条は、国民全般の経済生活を安定確保するという公共の福祉を維持するためのものであり、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
食糧管理法9条が、主要食糧の移動という個人の経済活動を制限することが、憲法29条が保障する財産権を不当に侵害し違憲となるか。
規範
財産権に対する制限が憲法29条に適合するか否かは、その制限が「公共の福祉」を維持するために設けられた必要かつ合理的なものであるかによって判断される。具体的には、当該規制の目的が国民生活の安定等の公的利益に資するものであり、その目的を達成するために個人の行動の自由を制限することが許容される範囲内であれば、合憲と解される。
重要事実
被告人は主要食糧の移動に関する制限に違反したとして食糧管理法違反で起訴された。これに対し被告人側は、主要食糧の移動を制限または禁止することを認めた食糧管理法9条の規定は、財産権を保障する憲法29条に違反する無効なものであると主張して上告した。
あてはめ
食糧管理法の目的は、国民全般の食生活および経済生活の安定を確保することにあり、これは「公共の福祉」に合致する。同法9条は、この目的を達成するための手段として、政府が必要と認める場合に主要食糧の配給、譲渡、移動等を制限・禁止する権限を与えたものである。このような制限は、国民全体の生活基盤を維持するために必要不可欠な範囲での制約であり、財産権に対する合理的制限といえる。したがって、同条は公共の福祉を維持するために設けられた正当な規定であると評価される。
結論
食糧管理法9条は憲法29条に違反しない。したがって、同条に基づき被告人を処罰することは適法であり、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
財産権の制限に関する初期の重要判例であり、公共の福祉による制約の合憲性を肯定する枠組みを示す。答案上は、経済的自由や財産権に対する規制が「国民生活の安定」という政策目的から合理性が認められる場合に、憲法29条2項の範囲内として合憲性を肯定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1153 / 裁判年月日: 昭和29年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法による食糧の配給制や価格統制等の制限は、公共の福祉のために必要な制限であって、憲法25条や憲法29条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法違反の罪で起訴された。弁護人は、食糧管理法による食糧の統制が憲法に違反する旨を主張し、上告した。 第2 問題の所在(論点):食糧管理法…